研究実績の概要 |
シンビオイミンは骨粗鬆症治療候補化合物として期待される海産アルカロイドである。シンビオイミンをリード化合物とした創薬研究への展開を踏まえ、三環性含窒素主骨格に種々の芳香環側鎖を連結した誘導体も合成できるように、三環性含窒素骨格を合成した後、芳香環部分を連結する合成計画を立案した。本年度は1) 三環性含窒素骨格を構成するヒドロキノリン骨格の新たな合成法の開拓、および、2) 三環性含窒素骨格の構築に向けた置換ヒドロキノリン合成への展開に取り組んだ。 1) 三環性含窒素骨格を構成するヒドロキノリン骨格の新たな合成法の開拓 ヒドロキノリン骨格は、ヒドロキシ基および電子求引性置換基 (Ts, Ns基) を持つアミノ基の双方を有するアミノアルコールを用い、ヨードシクロヘキセンとの銅試薬を用いたカップリングにより合成した。まず、ヨードシクロヘキセンとアミノアルコールとの炭素-窒素 (C-N) または炭素-酸素 (C-O) カップリングのそれぞれが優先する反応条件を見出した。さらに、C-Nカップリング生成物であるエナミンに対しルイス酸を作用させた脱水的閉環、またはC-Oカップリングに続くClaisen転位で生じたケトンのアミノ基と分子内のカルボニル基の縮合により、ヒドロキノリン骨格を合成する手法の開拓に成功した。 2) 三環性含窒素骨格の構築に向けた置換ヒドロキノリン合成 三環性含窒素骨格の構築に向け、1)で得られたヒドロキノリン骨格から置換ヒドロキノリンの合成を検討した。骨格上の二重結合を活用し、アリル位を位置選択的に水酸化してアリルアルコールを置換ヒドロキノリンとして得た。このヒドロキシ基を足がかりとすれば炭素鎖を伸長でき、シンビオイミンの三環性含窒素骨格構築への展開が期待される。
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