研究課題/領域番号 |
21J14480
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
益田 洋輝 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ポリロタキサン / 分子可動性 / 間葉系幹細胞 / 血管内皮細胞 / 共培養 / 歯根膜細胞 / 骨分化 |
研究実績の概要 |
ポリロタキサンは多数の環状分子(α-シクロデキストリンなど)の空洞部を線状高分子が貫通した超分子集合体であり、環状分子が線状高分子鎖に沿って運動する分子可動性が期待される。ポリロタキサンの分子可動性は、環状分子の貫通数に依存する。本研究課題では、歯周組織に存在する歯根膜細胞(患者抜去歯より採取)の骨分化をポリロタキサンの分子可動性の調節により促進する細胞培養表面を構築すること、及びそれらの知見をもとにポリロタキサン被膜メンブレンを設計し、ポリロタキサンの分子可動性が歯周組織再生に与える効果についてin vivoで明らかにすることを目的としている。 2021年度は、ポリロタキサンの分子可動性が複数の細胞の培養系における骨分化に与える影響を明らかにするために、骨再生において重要な役割を果たす間葉系幹細胞および血管内皮細胞の共培養系をターゲットとして、石灰化の評価を行った。ポリロタキサンの分子可動性が間葉系幹細胞に与える影響を調べたところ、α-シクロデキストリンの貫通数の多いポリロタキサン表面に接着した間葉系幹細胞では、メカノセンサー分子が細胞核に移行することが明らかになった。メカノセンサー分子が細胞核に移行すると、間葉系幹細胞の骨分化が促進されることが知られている。また、α-シクロデキストリンの貫通数の多いポリロタキサン表面上では、貫通数の少ない表面と比較して間葉系幹細胞の骨分化を促進する骨形成タンパク質の遺伝子発現が上昇していた。結果として、これらの相乗作用によりα-シクロデキストリンの貫通数の多いポリロタキサン表面上の間葉系幹細胞-血管内皮細胞共培養系では著明な石灰化の亢進を誘導することができた。このように複数の細胞の培養系における骨分化を促進するポリロタキサン表面は、複合組織である歯周組織における骨再生の足場として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、ポリロタキサン表面の分子可動性が間葉系幹細胞と血管内皮細胞の共培養系における石灰化に与える効果を明らかにした。さらに、併行して患者由来歯根膜細胞を多数採取し、培養方法を確立させることに成功した。おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
採取した患者由来歯根膜細胞を分子可動性の異なるポリロタキサン表面上で培養し、骨分化の評価を行う。また、ポリロタキサンとコラーゲンからなる2層ゲルあるいはポリロタキサンを被膜したコラーゲン膜をマウスの骨欠損部に移植し、ポリロタキサンの分子可動性が骨再生に与える効果についてもin vivoで明らかにする。
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