研究課題/領域番号 |
21J14481
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長野 倫 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | シクロオクテン / 二官能性触媒 / Lewis塩基触媒 |
研究実績の概要 |
タンパク質間相互作用の時空間選択的標識を実現する生体適合リレー触媒反応の開発を目指して、まずシクロオクテン触媒の光異性化反応を用いた触媒活性の制御に取り組んだ。しかし、シクロオクテン触媒の光異性化率が10%程度から向上せず、触媒活性の変化が僅かに見られたのみであった。そこで戦略を一部変更して、トンラスシクロオクテン触媒の置換基効果に注目した触媒活性の制御に取り組んだ。これまでの研究の結果から、トランスシクロオクテン触媒の活性が置換基により大きく影響されることは予備的に見いだしていたが、さらに速度論的実験を行い、反応機構に関する情報を集めて置換基効果を調べた。そして、得られた知見をもとに触媒を検討した結果、トランスシクロオクテン触媒にヒドロキシ基を導入した二官能性トンランスシクロオクテン触媒が以前報告した触媒に比べて非常に高い触媒活性を示すことを見いだした。ここで導入したヒドロキシ基は触媒活性を制御するハンドルになり、ヒドロキシ基を保護することで触媒活性を抑制できることも見いだした。そこで、ヒドロキシ基に光分解性保護基を導入した触媒を開発し、光照射による触媒活性の制御を検討した。その結果、新たに開発したシクロオクテン触媒の活性が光照射によりOFFからONに変化することを見いだした。これにより計画していた外部刺激に応答して触媒活性のOFF/ON制御可能なシクロオクテン触媒の開発を達成した。 さらにトランスシクロオクテン触媒を用いた不斉触媒反応を研究する過程でキラルルイス塩基触媒に関する新たな着想を得て、アシルシランの触媒的不斉シアノ化反応を開発し、論文として報告した。これは酵素を用いないアシルシランの触媒的不斉シアノ化反応の初めての報告である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該研究者はタンパク質間相互作用の時空間選択的標識を実現する生体適合リレー触媒反応の開発を目指して、始めにシクロオクテン触媒の光異性化反応による触媒活性の制御に取り組んだ。様々なシクロオクテン触媒や光触媒を検討したが、シクロオクテン触媒の光異性化率は10%程度から向上せず、触媒活性の変化が僅かに見られたのみであった。そこで計画を一部変更し、トンラスシクロオクテン触媒の置換基効果を利用した触媒活性の制御に取り組んだ。当該研究者のこれまでの研究成果から、トランスシクロオクテン触媒の活性が置換基により大きく影響されることは予備的に見いだしていたが、さらに速度論的実験を行い、反応機構に関する詳しい情報を集めて置換基効果を調査した。そして、得られたデータをもとに触媒検討を行った結果、トランスシクロオクテン触媒の置換基にヒドロキシ基を導入した二官能性トンランスシクロオクテン触媒が以前報告した触媒に比べて非常に高い触媒活性を示すことを発見した。ここで導入したヒドロキシ基は触媒活性を制御するハンドルになり、ヒドロキシ基を保護することで触媒活性を抑制できることも併せて見いだした。そこで、ヒドロキシ基に光分解性保護基を導入した触媒を新たに開発し、光照射による触媒活性の制御を検討した。その結果、新たに開発したシクロオクテン触媒の活性が光照射によりOFFからONに変化することを見いだした。これにより計画していた外部刺激に応答して触媒活性のOFF/ON制御可能なシクロオクテン触媒の開発を達成した。 さらにトランスシクロオクテン触媒を用いた不斉触媒反応を研究する過程でキラルルイス塩基触媒に関する新たな着想を得て、アシルシランの触媒的不斉シアノ化反応を開発し、論文として報告した。これは酵素を用いないアシルシランの触媒的不斉シアノ化反応の初めての報告である。
|
今後の研究の推進方策 |
計画3に取り組む。まず、計画1・2の反応技術を利用したシクロオクテン触媒/光触媒協働系による反応の光応答性を検証し、14-3-3タンパク質によるタンパク質間相互作用の時空間選択的標識反応を試験管内で実証する。その後、生細胞(HeLa)に発現させた膜タンパク質を標的にして、生細胞でも本手法が機能することを実証する。ここでは既に計画を共有している共同研究者と協力して小サイズタンパク質タグを用いる選択的ラベル化法を応用して計画2で開発したイリジウム錯体触媒(第一の触媒)を研究対象のタンパク質に導入し、近赤外光によるタンパク質間相互作用の時空間選択的標識を実現する。各消耗品費は計画1・2で開発したシクロオクテン触媒および光触媒の生細胞内での反応に利用する。さらに研究で得られた成果は日本ケミカルバイオロジー学会および春季年会で発表し、論文としても報告する。
|