研究課題
窃盗再犯防止対策においては,窃盗犯の問題のあり方の多様さから,体系化が困難であるとされてきている。そこで,本課題では,高頻度に繰り返すことによって習慣化した窃盗行動に関して,窃盗に関連する刺激と窃盗行動との結びつきが強固である自動化した状態像として理解し,有効な支援方法を検討することを目的とした。今年度は,窃盗行動の自動化を維持させる要因を明らかにし,有効な支援方法を検討することを目的として,窃盗行動のアウトカム指標の作成および窃盗行動の自動化維持要因と窃盗行動との関連の検討を行った。具体的には,(a)再犯リスク測定ツール日本語版を作成し,信頼性と妥当性を検討した研究1,(b)窃盗行動の自動化維持要因と窃盗行動のアウトカム指標との関連を検討した研究2を実施した。また,(c)マインドフルネスを加えた集団認知行動療法による窃盗行動の自動化維持要因の変化が窃盗行動に及ぼす影響を検討した研究3についてもデータの収集を開始した。その結果,再犯リスク測定尺度が作成され,原版に準じた信頼性と妥当性が確認された。また,窃盗行動の自動化を維持させる要因に関しては,窃盗行動は高頻度に繰り返される中で一般に欲求が生じ,一部の層は結果への期待も高いこと,さらに,結果への期待の高さが再犯リスクの高さと関連があることが示唆された。これらの成果は,本課題の目的である窃盗行動が自動化した状態に対する有効な支援方法の確立における基礎的知見になると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究から得られた成果は,当初の計画の基礎となる部分であり,次年度につながる研究を遂行したと判断できるため。
次年度は,今年度の研究から得られた知見を踏まえて,窃盗行動の自動化に対する軽減方略を加えた認知行動療法の効果を検討する研究を行う。
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