研究課題/領域番号 |
21J14493
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岸野 真之 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 液晶 / 中立面 / 湾曲 / ソフトマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究は,非線形力学応答を示すフィルムの積層により,ソフトマテリアルの湾曲に伴う中立面移動を抑制し,デバイスの湾曲耐久性を向上させることを目的としている。初年度に当たる本年度は,液晶フィルムを作製し,力学挙動を解析した。さらに,これらのフィルムの中立面移動抑制能を調べた。 ネマチック液晶,アクリレートモノマー,架橋剤,連鎖移動剤,光重合開始剤を様々な組成比で混合し,試料を調製した。配向処理を施したガラスセルに調製した試料を浸透し,液晶相温度において光重合を行うことで液晶フィルムを作製した。配向度は偏光顕微鏡観察により評価した。 作製した液晶フィルムを裁断機により切り出し,引張試験機を用いて力学特性を評価した。その結果,引張方向と液晶分子の配向方向が平行な場合は,分子配向が垂直の場合と比較して高い弾性率を示した。さらに,化合物の組成比に応じて,弾性率や破断ひずみ,破断応力が異なることが明らかになった。また,引張方向と分子配向方向が垂直のフィルムでは,あるひずみを境に応力の増加量が変化する非線形的な力学応答を示すことがわかった。この非線形力学応答は,液晶分子の配向変化に起因すると考えている。 非線形力学応答を示すフィルムをポリジメチルシロキサンフィルムに積層し,ひずみセンサーを用いて湾曲に伴う中立面の移動を評価した。湾曲に伴い誘起される中立面移動が抑制されることを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である「ソフトマテリアルの湾曲に伴う中立面移動の抑制」を達成するため,初年度は主に液晶フィルムの作製と力学特性評価,中立面移動量の解析を行なった。いずれについても実績概要に記載した通り,研究計画に従って実施し,興味深い結果が得られた。また,得られた成果を,国際学会3件(口頭: 1件,ポスター: 2件),国内学会4件(口頭: 1件,ポスター: 3件)において筆頭著者として発表した。さらに,筆頭著者として論文を2報発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き非線形力学応答フィルムをソフトマテリアルに積層することにより中立面移動を抑制し,湾曲耐久性の高いデバイスの作製を目指す。液晶フィルムをポリジメチルシロキサンフィルムに積層し,湾曲に伴うひずみを測定することで中立面移動を定量化する。 中立面移動が抑制されたフィルムの作製に成功後,スパッタリング装置等を用いてITOや金などの導電材料を成膜し,デバイスを作製する。このデバイスの湾曲に伴う導電率の変化を測定し,導電率の低下度合いを調べる。
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