研究課題/領域番号 |
21J14499
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
見崎 裕也 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 二次代謝制御 / 放線菌 / シグナル分子 / SARP / 活性化因子 |
研究実績の概要 |
Streptomyces属放線菌の二次代謝産物生産制御システムの分子基盤解明と合目的な物質生産誘導への応用を目的として、①SARP (Streptomyces antibiotics regulatory protein) 型活性化因子の発現誘導による二次代謝生産の合理的活性化、②制御遺伝子多重欠失株から見いだされた化合物の解析、を遂行した。
①SARP型活性化因子は二次代謝産物生合成遺伝子の経路特異的な活性化を担うことが知られている。そこで、Streptomyces rocheiの染色体上に存在する12個のSARP遺伝子を人為的に活性化することで休眠二次代謝の活性化を試みた。 SARP遺伝子SRO_3163強制発現を施した変異株から新規代謝産物を検出した。MS解析、NMR解析により構造決定を行ったところ、2-(cyclohex-2-en-1-ylidene)acetamideであると判明した。本成果によりSARP遺伝子SRO_3163が未同定のYM3163-A生合成遺伝子群を活性化することが示唆された。 ②二次代謝制御システムの分子基盤解明に際して、様々な制御遺伝子変異株を構築している。多重遺伝子変異株 (TetR遺伝子srrCとSARP遺伝子srrYの二重遺伝子欠失) の代謝産物から、親株には見られない3種類の化合物を見いだした。これらの化合物を各種クロマトグラフィーにより単離し、構造を決定したところ4,10-dihydroxy-10-methyldodecan-4-olide、4,10-dihydroxy-10-methylundecan-4-olide および 4-hydroxy-11-oxo-10-methyldodecan-4-olideであることが判明した。3種のガンマブチロラクトン化合物は、シグナル分子SRBの代替物質として機能しないことを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①に関しては、S. rocheiにおける遺伝子発現システムが確立されていたことに加えて、生産誘導された化合物YM3163-AがUV活性化合物であったことから、容易に検出することができた。そのため、2021年度中に構造決定に至り、論文を公表することができた。
②に関しては、多重制御遺伝子変異を施すことで通常培養では検出できなかった化合物を同定することに成功した。本化合物群については共通のガンマブチロラクトン骨格を有しており、放線菌特有のシグナル分子との類似性について着目している。
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今後の研究の推進方策 |
①については、他のSARP発現株の代謝産物解析を遂行中であり、少なくとも1つの株では代謝産物に変化が見られており、単離を進めている。また、SRO_3163発現株から見出された化合物2-(cyclohex-2-en-1-ylidene)acetamideの生合成起源を明らかにするために、生合成遺伝子の特定を進める。YM3163-Aは、大規模ゲノム欠失株を培養した際にも蓄積されることを見出しており、両者の遺伝子発現を比較することで、当該遺伝子の抽出を試みる。
②については、今回報告した3種のガンマブチロラクトン化合物はS. rocheiのシグナル分子SRBと生合成前駆体を共有している可能性がある。多重変異 (SrrY-C)に加えて、SRB生合成遺伝子欠失を施すことで、生合成過程の解明を遂行する。
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