放線菌Streptomyes rocheiは35個の二次代謝産物生合成遺伝子クラスターを保有しているが、そのうち大多数の二次代謝産物は未同定である。理由としては、生産収量が低いため検出できていない、培地条件により化合物生産に至っていない、生合成遺伝子の欠損、など様々な理由が想定される。そこで、本研究課題では、制御遺伝子の改変により、転写レベルで生合成遺伝子クラスターを活性化することを試みた。標的遺伝子として、転写抑制を担うシグナル分子レセプターホモログ、活性化を担うSARP型活性化因子に注目し、研究を遂行した。本年度は特に後者の活性因子に注力した。昨年度の研究により、Streptomyces rocheiの染色体上に存在するSARP型活性化因子SRO_3163を過剰発現させることで、親株には見られない新奇代謝産物YM3163-Aの生産が誘導されることを見いだした。 SARP型活性化因子SRO_3163遺伝子は二次代謝産物生合成遺伝子クラスターに内包されておらず、グローバルな活性化因子として機能する可能性が示唆された。そこで、コントロール株(空ベクターを保持)と、SRO_3163過剰発現株の転写発現を解析することにより、YM3163-A生合成遺伝子クラスターを特定することを試みた。両菌株のRNAを抽出し、RNA-seq解析を行なった。その結果、複数の生合成遺伝子クラスターにおいて顕著な変化が見られ、単一の生合成遺伝子クラスターに絞り混むことが困難であった。
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