研究課題/領域番号 |
21J14541
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
王 令薇 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | テレビ教育 / 公共性 / メディア史 / 地域社会 / ゆとり教育 / 日本放送協会 / 社会教育 |
研究実績の概要 |
次の4つの課題を中心に、学会発表ないし論文執筆を行った。 ①NHK『中学生日記』の内容およびその変容に関する考察:同番組の全体像を同時代の教育言説と比較しつつ論じた修士論文に当たる内容は、『マス・コミュニケーション研究』第98号に投稿する際にもらった査読意見をもとに修正を行い、同誌の第99号に再投稿し、採録が決定した。 ②NHK『中学生日記』と地域社会との関係の調査:同番組のディレクターやプロデューサー6人、昔の出演者かつNHK名古屋児童劇団卒業生の3人に対して、インタビュー調査を実施した。調査の結果は、11月に日本マス・コミュニケーション学会で報告し、『京都大学大学院教育学研究科紀要』第68号に投稿、査読修正を経て採録が決定した。また、放送児童劇団の歴史を素人演劇・児童演劇の系譜から、また場所感の変容と維持の視点から整理した成果は、日本コミュニケーション学会の年次大会やIAMCR Conference 2022で発表することが決定した。 ③1979年に国際児童年の記念行事の一つとして、青少年育成国民会議によって開催された「少年の主張」全国大会に関する考察:全国大会の報告書を取集し、メディア・イベントや、ゲートキーピングの視点を用いて、同イベントの歴史を整理した。その成果は、9月に日本教育社会学大会で報告した。 ④博士論文の理論的枠組みを探る作業:<意味>の社会学、例えば、ドラマツルギー、知識社会学と構築主義の古典を読みつつ、「リアルな中学生の日常」を翻訳する『中学生日記』という番組の特徴の理論化に取り組んでいる。成果に関しては、「演出された真正性」の視点から「リアル」を構築する『中学生日記』の形式を解明し、「テレビの/に映った「裏領域」をめぐって:NHK『中学生日記』のメディア論」として『日本コミュニケーション研究』に投稿して、現在は査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定の取材対象は日本国内にいるため、「緊急事態」「まん延防止」でない時期に、感染対策をしっかり講じたうえで、東京・名古屋に出張し、資料調査やインタビューを実施することができた。また、オンラインを通じた報告の機会は多くあるため、それを積極的に活用し、日本国内のみならず海外の研究者と交流することができた。 それらの成果は、学会及び研究会における4件の口頭発表、『マス・コミュニケーション研究』『京都大学大学院教育学研究科紀要』への2本の査読論文の掲載、1本の日本語論文の投稿(査読中)および書評論文の掲載に表れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までは『中学生日記』をめぐる資料収集に力をいれて、データベース化する作業を行ってきた。2022年度からは、全体の問題提起の見直しや、資料の整理をさらに進め、年度中に博士論文にまとめたい。研究成果の発表については、日本コミュニケーション学会第51回年次大会および、IAMCR Conference 2022のHistory Sectionへの参加を予定している。また、研究成果の刊行は出版社との間で交渉が進んでおり、出版社の編集者の意見をも取り入れて、2023年度中の公刊を目指す。
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