本研究では、これまで、Nitrospiraに保存される2種類のRNA切断酵素MazFについてその酵素学的性質を調査した。これらMazFはRNAに対する配列特異性や至適条件が大きく異なるにもかかわらず、いずれのMazFの認識配列もNitrospiraのエネルギー代謝関連遺伝子に有意に多く存在することから、本酵素がNitrospiraの低活性状態への移行に関与することが示唆された。当該年度では、Nitrospiraに保存されるMazFを網羅的に調査すべく、全ゲノムが公開されている主なNitrospiraの単離株および集積培養された種、計11種類についてゲノム解析を行なった。その結果、既に単離された株よりも未だ単離に完全に成功していない集積株の方がMazFの数が多く、本酵素がNitrospiraの単離の難易度に直接的または間接的に影響していることが示唆された。 また、本研究の当初の目的である、Nitrospiraの低活性状態への移行の一連の分子メカニズムの解明を達成するため、RT-ddPCRを用いてMazFの発現量の定量実験について条件検討を行い、細胞の培養条件、mRNAの抽出条件、質量分析器の運転条件などを決定した。
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