昨年度は内因的対破壊機構における超伝導ダイオード効果について非相反臨界電流の符号反転領域の存在に加え、符号反転とヘリカル超伝導との関連性を明らかにした。超伝導ダイオード効果の実現は超伝導を用いた省電力論理回路といった応用や、符号反転とヘリカル超伝導との対応からその実験プローブとしても期待されるが、実際のデバイスでは不純物の存在が不可避であり、不純物効果の理論的扱いは重要であると考えられる。最終年度である本年度は、そうした内因的対破壊機構による超伝導ダイオード効果に与える不純物の影響を明らかにすること目的とし、微視的計算による理論研究を行なった。ここでは超伝導ダイオードにおける内因的対破壊機構とはクーパー対が獲得する運動エネルギーが、対凝縮によるエネルギー利得を上回ることにより超伝導が壊れる機構を指している。 理論解析の結果以下の三つの重要な点が解明された、それはi)超伝導ダイオード効果における符号反転が弱い不純物ポテンシャル影響下においても抑制される点、ii)超伝導ダイオード効果の磁場に対するピーク位置がヘリカルクロスオーバーの前兆を捉えている点、そしてiii)超伝導ダイオードの能率が弱い不純物ポテンシャル下で向上するという点である。 以上の成果について2件のポスター発表を行い、成果をまとめた論文はPhysical Review B誌に投稿中である。
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