本研究は、光通信における次世代の多重化技術である光渦多重に不可欠な要素であるデマルチプレクサを実現するために行われた。本研究の光渦デマルチプレクサは,トポロジカルフォトニクスの特性を利用することで、小型化と完全パッシブ化が期待できる。 当初の研究計画から、2021年度末において垂直キャビティの実験について遅れが出ていたものの、2022年度において垂直キャビティの作製・評価と、最終目標としていたトポロジカル光渦デマルチプレクサの作製と評価まで行った。 垂直キャビティにおいては、自由空間からトポロジカルフォトニック結晶に垂直に入射する光の結合効率を高めるために、欠陥構造を導入し、波長1581 nmにおいて結合効率が最大で-16.46dBとなることを示した。また、垂直キャビティを用いた際の、円偏光の回転方向によるトポロジカルフォトニック結晶内での分岐比は、波長1571 nmにおいて最大で12.64dBとなることを示した。 ここまでに行った研究の総括として2円偏光×2光渦の4多重を分解するトポロジカル光渦デマルチプレクサの実証実験を行い、波長1490nmにおいてクロストークの最小値が-4.78dBであることを示した。 本研究結果から、直ちに光通信に利用できる数値とは言えないものの、将来的にトポロジカルフォトニクスの技術が光渦多重通信による光通信容量増大の基盤となる可能性を見ることができた。また、理論的側の成長著しいトポロジカルフォトニクスの分野において、応用の可能性を示したという点においても本研究によって得られた成果は大きいといえる。
|