研究課題/領域番号 |
21J14855
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 聡太郎 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 音楽的拍子 / 脳波 / 事象関連電位 / 心理物理学 / オンライン実験 / 多義的音刺激 |
研究実績の概要 |
本研究では音楽的拍子の知覚機構を探究することを目指す。拍子は音列の物理的な特徴を基に音を群化する主観的体験である。そこで、高さ注意時と長さ注意時で異なる拍子を知覚しうる多義的な音刺激を被験者に呈示し、その間の脳波を計測する。 本年度の実績は以下の通りである。まず多義刺激から異なる拍子が知覚されることを行動実験によって示した。結果をまとめた学術論文は国際誌で公刊された。次に実験①に着手した。予備実験において被験者が知覚する拍子を選択的に操作する手法を開発し、拍子に関連する事象関連電位を取得した。この結果を3件の国内学会で発表し、議論を基に本実験を計画した。新型コロナウイルス感染症の影響により、大規模な対面実験の実施が難しく、本実験は年度内に完結しなかった。次年度も実験を継続し、結果がまとまり次第学会等で発表する。 対面実験が困難だった間、オンライン行動実験を実施した。拍子を特徴づける拍の強弱が、音の大きさの知覚に影響を与えるかを心理物理学的手法で検討した。1つの実験で100人の被験者を募集し、計6つの実験を行った。その結果、物理的に同一の音を呈示しても、それが強拍か弱拍かで異なる大きさに知覚されることが示唆された。次年度に学会や論文などで結果を発表するほか、脳波計測実験にも得られた知見を応用する。 研究に関連したアウトリーチ活動として、新学術領域「共創的コミュニケーションのための言語進化学」が出版予定の論文集執筆に参加した(次年度出版予定)。多義刺激を使った実験から得た知見を基に、音楽リズムとコミュニケーションの関連を総説論文で解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度内に研究計画にある実験①を終了し、実験②の予備検討に入る予定だった。しかし、実験①が年度内に完結しなかったため、次年度も継続して実施する。これは新型コロナウイルス感染症の影響を受け、必要な被験者数を確保できなかったことが原因である(1つの実験につき被験者予定数は20人から30人)。 ただし、対面実験が困難だった期間にオンライン実験を遂行するなど、現状計画の遅れには臨機応変に対応できている。また、次年度は本年度よりも市民の新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、被験者も募集しやすくなると考えられる。そのため、本年度の遅れは次年度に十分取り戻せるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
実験1については継続して計測を実施し、次年度の早期に終了させることを目指す。実験1の解析を進めながら実験2の予備的な検討と本実験を行い、現在までに生じた遅れを取り戻す。その他は当初計画した手順で研究を進める。 新型コロナウイルス感染症に十分注意しながら対面実験を遂行する。さらに、計画した実験のうち可能な範囲をオンライン化することで、感染症流行が本研究に与える影響を最小化する。
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