研究課題/領域番号 |
21J14857
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 拓未 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ブラックホール / 真空相転移 / トンネル効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、重力の存在下において半古典的な真空泡の生成過程を考え、ブラックホール周りの真空相転移に対して理論的な基礎づけを与えることであった。 そのために時空をユークリッド化せずに、直接実時間形式で相転移確率を調べるということに取り組んだ。一般にユークリッド化したブラックホール時空中では、量子場はホーキング温度の熱浴中にいるような状態となる(Hartle-Hawking state)。しかし、重力崩壊によりできたブラックホール中では、量子場はブラックホールから放出する向きの放射しか持つことが出来ない(Unruh state)。よって、先行研究の手法は理論的に不備があると指摘されていた。そこで実時間で量子力学的遷移振幅を、ローレンツ経路積分を直接計算することで、相転移現象を議論することを試みた。簡単のためまずブラックホールではなくドジッター宇宙中での真空泡の生成(Coleman-de Luccia相転移)を議論したところ、従来のユークリッド化による解析の結果を再現することに成功した。これにより、理論的基礎づけが曖昧だった重力中の真空相転移現象を、実時間的な観点から直接示すことが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はエントロピー増大という熱力学的な観点からブラックホールの真空相転移を議論しようと考えていたが、小さな確率であればエントロピーが減る過程も許されるということから、この方向性を修正することにした。むしろ熱的な相転移を量子力学的な真空泡の生成過程として捉え直すことを試みた。技術的な問題から、ブラックホール周りの相転移の解析にとりかかる前に、宇宙論的なドジッター時空中での相転移を議論している状況であった。
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今後の研究の推進方策 |
ドジッター時空中での真空泡生成の結果を、ブラックホールに応用することが今後の方向性である。地平線の存在や時空の対称性の違いと言った微妙な問題に対処する必要がある。
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