研究実績の概要 |
令和5年度は2019~2022年度実施の海鷹丸・しらせ・白鳳丸南大洋観測で採取された海氷・海水試料の分析と衛星データの解析を進めた。海氷の塩分、クロロフィルa濃度、栄養塩濃度、アイスアルジー組成、海氷物理構造を分析し、南大洋の海氷融解期(2月)における珪藻Fragilariopsis curtaの海氷中におけるブルーム形成プロセスと、海氷融解後に水中でブルームを起こす「タネ」としての可能性について論文を公開した(Takahashi et al. 2023, Diatom)。アイスアルジーの「タネ」としての寄与をより詳細に評価するため、2019年、2023年に実施した現場培養実験の分析も行った。大型珪藻が海氷融解時の塩分低下にともない生存率が大幅に低下するため海氷融解後の植物プランクトンブルーム(氷縁ブルーム)に貢献しないことが明らかとなり、この内容で口頭発表を行った(日本海洋学会2023年度秋季大会)。また海氷生成期に採取した新成氷・海水のデータを用いて、海氷の断面構造から推測する結氷過程とその時海氷に取り込まれる植物プランクトン・粒状珪素の関係および、昨冬以前に生成した海氷から放出された藻類が再び海面での結氷によって新成氷へ取り込まれるプロセスを明らかにした。衛星データ解析では、海氷縁辺域におけるクロロフィルa濃度(氷縁ブルームの有無など)と海氷生成場所の関係について考察した。海氷生成にともなう植物プランクトン・粒状珪素の取込みに関する研究成果は国際誌に投稿し、他の研究についても順次論文を執筆中である。
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