昨年度に報告した配位子交換クロマトグラフィーを用いたタンパク質C末端ペプチド濃縮法と、当研究室で開発した強陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたタンパク質N末端ペプチドとNおよびC末端ペプチド濃縮法を組み合わせた、包括的なタンパク質末端解析ワークフローの構築を検討した。その結果、手法間で共通同定されたタンパク質はN末端では32%、C末端では4%と、それぞれの手法で同定されるタンパク質末端配列は相補的であり、組み合わせることでより網羅的な解析が可能となることが示された。 さらに、構築した包括的なタンパク質末端解析技術を用いて、非翻訳領域や異なる翻訳開始点から翻訳されたノンカノニカルORFの発現の大規模解析に応用した。トランスレイトーム解析で同定されたノンカノニカルORFとタンパク質末端解析での同定結果を比較すると、トランスレイトーム解析では実際に発現されているノンカノニカルなタンパク質を完全には網羅できてはいないことが示された。そこで、タンパク質末端解析で同定されたノンカノニカルタンパク質および翻訳開始点の情報を用いてタンパク質レベルでの翻訳開始点予測を行い、タンパク質配列データベースを構築したところ、トランスレイトーム解析から構築したデータベースよりも多くのノンカノニカルなタンパク質を同定することに成功した。そして、タンパク質末端解析技術とタンパク質末端解析結果から構築したタンパク質配列データベースを用いて、分化条件下におけるTHP-1細胞に応用した結果、分化に関与する可能性のあるノンカノニカルタンパク質の同定に成功した。
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