マグノンの波動関数を磁性体の膜厚で制御し、注目する系の持つ誘電体環境によって電磁場の空間構造をデザインすることでマグノンの非局所電磁応答について議論を行った。本研究では磁性体/誘電体/磁性体のサンドイッチ構造と誘電体周期構造(フォトニック結晶)の電磁応答に注目した。 サンドイッチ構造では、前年度に引き続き各磁性体の膜厚の最適化を行い、スピントロニクスデバイス実現に向けて議論を行った。また、自励モードを計算することによって構造内におけるマグノン-ポラリトンの散逸を計算し、コヒーレンス長を評価を行った。コヒーレンス長は提案するモデルで高速のマグノンが十分長距離に伝搬することが可能であることを示し、今後高速スピントロニクスデバイスの提案では本モデルが大きな優位性を持つことを示した。 さらに、単層磁性体膜や磁性体膜とフォトニック結晶を組み合わせた系での電磁応答解析をおこなった。励起するマグノンのモードを電磁波の周波数や、空間構造、または印加静磁場強度を制御することにより選択的可能であることを示した。本研究で定式化したマグノンの非局所電磁応答理論では、解放系に見られる非エルミート効果の一部が議論可能である。非エルミート効果は先行研究にあるようなマイクロ波の進行波成分と磁性体内部のマグノンモードとの結合である可能性を示し、現在議論を行っている。 これらの結果は、磁性体の電磁応答における基礎的な物理的視点を与えるだけでなく、あらたな高速スピントロニクス応用に大きな役割を果たすものである。
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