2022年度は2件の学会報告を実施した。まず、8月には日本教育学会第81回大会にて、社会調査の二次分析を留学志向の規定要因に関する分析結果を発表した。具体的には、高校生の留学志向と出身階層との関連を、留学期間・形態別に検討したものである。分析の結果、高校生の留学志向の有無には階層格差が存在していること、また、ホームステイや短期留学では家庭の経済的要因が、長期留学や学位取得留学では家庭の文化的要因がより影響していることなどを明らかにした。また、9月には日本教育社会学会第74回大会にて、留学経験者へのインタビュー調査もとに、「グローバル人材」の自己や集団の認識に注目した分析を発表した。具体的には、かれらが「やりたいこと」や「普通から外れる」といった言葉を用いながら、「エリート」や「普通の大学生」などと自身を差異化し、集団としてのメンバーシップを形成していることを指摘した。 また、これらと並行しながら4月から9月にかけて、これまでの調査・分析をもとに博士論文の執筆に専念した。博士論文では、これまでの研究成果を統合しながら、「出身階層-留学-地位達成」という三者の関連に注目しながら「グローバル人材」のライフコースを描出し、留学を通じた「エリート」の社会的再生産の様相について考察した。また、2022年10月に博士論文を提出した後は、未発表の分析結果について、『教育社会学研究』に論文を投稿した。また、博士論文を執筆するなかで、新たに浮上した課題を検討することを目的として、追加の調査を実施した。具体的には、次の二点である。第一に、国立国会図書館で『留学ジャーナル』や『国際派のための就職ジャーナル』など留学雑誌の収集および分析を行った。第二に、「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」参加者3名に対してインタビュー調査を実施した。
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