研究課題/領域番号 |
21J15546
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
堀尾 侑加 武庫川女子大学, 生活環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / ダイゼイン / RNA合成 / RdRp活性測定 / 5-リポキシゲナーゼ / リン酸化 / シグナル伝達経路 |
研究実績の概要 |
ダイゼインの5-LOX活性化に関与するシグナル因子の同定とウイルス増殖阻害機構の解明を目的とした。これまでに感染細胞においてダイゼインにより、ウイルスRNA合成及びウイルスタンパク質合成を阻害することを明らかにした。しかし、その詳細なメカニズムは不明である。 そこで第一に、ダイゼインがウイルスRNA合成を抑制したことから、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)活性を測定することとした。新規のRdRp活性測定法を従来のVirol J.(2021) 18;177に報告した。 従来のRdRp活性測定には、長時間の超遠心処理や放射性同位元素によるRNAのラベリングが必要であるが、我々が開発した手法では、磁気ビースによるウイルスの回収、Real time PCRによるmRNA合成量の検出が可能であり、安全かつ汎用性が高いことが利点である。本手法を用いてダイゼインによるRdRpの直接阻害を調べたが、阻害は認められなかった。以上のことから、無細胞条件における直接的なRdRp阻害をしないことから、ダイゼインは細胞自体のウイルス制御機構の活性化を宿主細胞のシグナル伝達を介して誘導する可能性が示唆された。 ダイゼインのウイルス抑制機構におけるシグナル伝達の詳細はまだ未解明な部分もあるが、ダイゼインが5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)活性化させるシグナル伝達経路が明らかとなってきた。5-LOXの活性化に関与するリン酸化酵素の阻害剤または促進剤を用いて、ダイゼインによる5-LOX活性化機構を検討したところ、特定のリン酸化酵素の活性化を同定した。現在、ダイゼインの5-LOX活性化機構に関する成果を論文に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に予定していたダイゼインのウイルス増殖抑制メカニズムに関する実験は、RdRpの新規測定法を開発しVirol J.に報告したが、詳細な阻害機構が明らかとなっていない。一方で、ダイゼインの5-LOX活性化機構の大部分が明らかとなってきていることから、おおむね順調に進展していると判断した。現在、ゲノム編集技術により5-LOXのリン酸化部位を置換した細胞を作製する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、ダイゼインの5-LOX活性化機構として、特定のリン酸化酵素の活性化によって5-LOXタンパク質がリン酸化されることを突き止めた。そこで、ゲノム編集により5-LOXのリン酸化部位を置換した5-LOXを発現する細胞を構築する準備を始めている。使用する細胞は、5-LOXの発現が報告されているヒト単球由来のTHP-1細胞を用いる。この細胞の作成に成功した場合は、ダイゼインの5-LOX活性化による5-HETEの生成が減少するか、さらにダイゼインの抗ウイルス効果が減弱するかウイルス力価を解析し評価する。 また、ダイゼインのウイルスRNA合成阻害機構のメカニズムのひとつとして、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)への影響を、細胞の因子を含まない条件下で解析したところ、ダイゼインによるRdRpの直接的な阻害は確認できなかった。この条件は細胞の因子も関与しないが、ダイゼインの代謝による影響も考慮できていない。そこで、5-LOXの活性化によって産生する5-HETE及び5-HpETE、あるいはダイゼインの代謝物を検討する。
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