疲労き裂は,脆性的な破壊を引き起こし橋梁の安全性に重大な影響を及ぼす可能性があるため,早期の発見および補修が重要となる.そのため,供用中の橋梁がどの程度の疲労き裂を有し,疲労き裂がどの程度,構造的な安全性に影響するのかといった健全性評価を効率的に実施可能な手法の開発および導入は喫緊の課題である. 一方で,既存のき裂探傷手法は,効率的な手法とは言えず,土木構造物の老朽化が進み,また,少子高齢化が進む我が国において,効率的に疲労き裂を遠隔検出,あるいはモニタリングする手法の開発が必要とされている. 本研究では,き裂により熱伝導の阻害が生じることに着目し,赤外線サーモグラフィを利用し,構造部材に対し能動的な熱負荷を行い,その温度分布の計測によりき裂探傷を行ってきた. 一年目である令和3年度には,画像微分処理など,画像処理をおこなうことにより,き裂の抽出を可能とし,ガセットやソールプレートなど鋼構造物にみられる,様々な構造形式への適用の検討をおこなった. 二年目である令和4年度には,実験結果および再現解析から,二次元的な赤外線サーモグラフィ画像より,き裂深さといった三次元的な形状把握が可能であることを示し,遠隔の計測対象に,レーザー光により遠隔的に熱を負荷し,赤外線サーモグラフィを用いて温度ギャップを計測することで,近接しなくとも,き裂深さ,き裂長さ等のき裂形状の同定が可能となることを示した. これらの成果は,国際会議(IABMAS,SEMC)において発表済である.
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