インドネシアにおいて、殺虫剤に用いられる農薬はこれまでの有機リン農薬から、ネオニコチノイド農薬に移り変わっている途上である。農業従事者の個人保護具の着用は推奨されているが実際の曝露状況についての調査は行われていない。ネオニコチノイド農薬の有害性についての疫学的な研究は途上であり、農業従事者へのリスクは不確かである。本研究では、有機リン、ネオニコチノイドを簡便に測定できる方法を開発し、インドネシア農民の有機リン・ネオニコチノイド農薬曝露を評価する。また農薬曝露の有害アウトカムとして中枢神経系障害との関連を評価することである。 今年度は、インドネシア中部ジャワ州マゲラン県の農業地域でPakis 地区の 500 人の農家を対象とした横断調査を実施した。独立変数は、ベースラインの人口統計データとアンケート16項目とした。神経行動パフォーマンスとして、反応時間、ベントン視覚保持時間、数字スパン、数字記号、追跡照準テスト、器用さテスト、POMSによって測定した。また生化学的検査、曝露の生物モニタリングを行うために、血液、尿試料の採取を実施した。この質問紙による農薬曝露情報と神経行動アウトカムの関連について統計解析を実施した。 将来的な尿中代謝物を用いた農薬等曝露の指標測定のための化学分析手法の開発を行った。ガスクロマトグラフィー質量分析計による水銀分析の検討を行い、有機水銀を汎用機器により分析できることを示した。
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