研究実績の概要 |
本研究では、スピロシクロプロパンを用いる複素環、炭素環形成反応の開発と、それを利用した有用化合物の合成に取り組んでいる。本年度は、以下の研究成果を得た。 (1) アミンによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応を用いたアザアズレンの合成 所属研究室で以前報告しているアミンによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応の、7員環スピロシクロプロパンへの適用を試みた。2’-フェニルシクロへプタン-1,3-ジオン-2-スピロシクロプロパンとベンジルアミンをアセトニトリル中で加熱すると、目的の開裂―環化反応が進行し、ヘキサヒドロシクロヘプタピロール-4-オンを収率87%で得た。しかしながら、その後のベンジル基の除去が困難であったため、他の除去容易な置換基をもつアミンを検討した。その結果、2,4-ジメトキシベンジルアミンを用いたところ、スピロシクロプロパンの開裂―環化反応が良好に進行しヘキサヒドロシクロヘプタピロール-4-オンを収率94%で得ることができ、さらに、5員環の酸化反応、酸性条件での2,4-ジメトキシベンジル基の除去を達成し、ピロール体を二段階収率71%で得ることができた。最後に、7員環の酸化とアザアズレン環への変換によって目的の2-フェニル-1-アザアズレンを4段階収率12%で合成することに成功した。 (2) リンイリドによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応の開発 6員環スピロシクロプロパンとリンイリドとの反応を試みた。2’-フェニルシクロヘキサン-1,3-ジオン-2-スピロシクロプロパンに、エトキシカルボニル基が置換したリンイリドを作用させると、ジクロロメタン中で加熱しても反応の進行は見られなかった。一方で、アセトニトリル中でより加熱することで炭素5員環形成反応が進行し、1,2-トランスジヒドロインダノンが選択的に得られることを見出し、反応条件を最適化した。
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