研究実績の概要 |
1. ヒミズUrotrichus talpoidesの頭骨形態における地理的変異と生物地理 日本固有種のヒミズ(モグラ科、哺乳綱)の頭骨296標本を形態計測・解析し、本土(本州・四国・九州)と周辺島嶼(隠岐・見島・対馬)の各島に生息する個体群に形態的な違いを明らかにした。さらに周辺島嶼の個体群は本土のものよりも歯列が大きくなることを示した。本結果を踏まえて、これまで日本の島嶼生物地理において支持されてきた「島嶼化」という動物の体サイズ変動を捉える概念に替わり、氷河期から間氷期に移行する際の海水面上昇に伴う「周辺島嶼における島面積の縮小」が動物の形態進化に与えた影響の重要性を提唱した。本研究はアメリカ哺乳類学会の国際誌のJournal of Mammalogyに投稿中である。 2. ヒミズUrotrichus talpoidesにおける新たな歯列異常 ヒミズの頭骨1,001標本の歯列を調査し、歯列異常を欠失歯・過剰歯・双丘歯として17個体(1.7%)から12件見つけ、このうち犬歯・第2小臼歯・第4小臼歯の過剰歯と犬歯の双丘歯を初めて報告した。本結果から、ヒミズはモグラ科に属する動物としては低い頻度の歯列異常を持つことを明らかにした。さらに、本研究は歯列異常の観点から、ヒミズの歯式に対する半世紀以上続いた論争に対し、I 3/2, C 1/1, P 3/2, M 3/3 = 36 (Ziegler 1971)の歯式を採用するべきという提唱を行った。本研究は、日本哺乳類学会の国際誌のMammal Studyに2021年に受理・掲載された。 3. ヒメヒミズDymecodon pilirostrisの頭骨形態における地理的変異 日本固有種のヒメヒミズ(モグラ科、哺乳綱)の本州・四国・九州より収集された頭骨103標本を形態解析した。本研究は現在、国際誌への投稿へ向けて執筆中である。
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