研究実績の概要 |
本年度は山岳地域の動物地理の解明に向けて野外調査・標本調査を実施した.これまで蓄積した標本と博物館や研究施設の所蔵標本と併せて形態計測値の解析と分子系統解析を進めた.さらにGPSデータと文献情報から分布域や分布標高の整理を進めた. 昨年度に引き続き,日本固有種のヒミズとヒメヒミズ(モグラ科,哺乳綱)の形態データを解析,その進化背景を考察し,ヒミズの動物地理論文をまとめ(Okabe et al. 2023. Zoologischer Anzeiger 303: 38-46),ヒメヒミズの山岳地域集団の形態分化の明示とその進化背景からMountain islandに言及した論文を国際誌Mammal Studyに投稿した.この標高約1,000mを境界に異なる標高分布をもつ2種の比較動物地理により,低地および山岳島がもたらす生物進化の統合的理解を得ている. 山岳における動物地理の解明に対してより普遍的な理解を得るため,インドシナ半島の山岳についてもベトナム科学技術院と共同調査を進めた.インドシナ半島の山岳調査の結果,新種のトカゲ類を発見し,国際誌への論文投稿に向け執筆をしている.また調査中に捕獲した新種のモグラ類の論文執筆にも共著者として携わり,国際誌Zootaxaに投稿中である. この他にも,日本産哺乳類の分類体系を見直した論文(谷戸,岡部(2nd)ほか. 2022. タクサ 53: 31-47)にて,モグラなどを含む真無盲腸目のパートを執筆した.また,これまでに参加した野外調査で収集した齧歯類(哺乳綱)の新産地報告(Motokawa, Okabe(4th) et al. 2022. Mammal Study 47: 205-212; 谷戸,岡部(2nd)ほか. 2022. 日本生物地理学会会報. 77: 93-97.)にも共著者となった.
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