本年度は引き続き、昨年度に同定した胎生期の卵母細胞の分化、および成体における卵母細胞の成長を規定条件下で再現する培養系により得られた卵母細胞様細胞の特性解析を行った。なお、構築した培養系は非常に再現性が高く、最終的に得られる成長した卵母細胞様細胞の直径の中央値は57~58μmで実験会によらず一定であった。培養34日目に得られた卵母細胞用細胞のトランスクリプトームデータを解析したところ、生後14日目の卵母細胞と同等といえる特徴を有していることが判明した。メチロームを解析したところ、生後7日の卵母細胞と12日目の卵母細胞の中間の特徴を有していた。これはトランスクリプトームデータから推定されるより若干幼若であった。この結果を踏まえ、卵母細胞様細胞の核移植実験を継続して産仔を得ることは難しいと判断した。また、核の拡散固定標本を解析すると、第一減数分裂前期を完了した卵母細胞に特徴的な染色体構造を確認することができた。また種々のヒストン修飾マークを超低インプットCHIP seqを用いて解析したところ、生後14日の卵母細胞と同等であると考えられた。ヒストン修飾とメチル化状態に若干乖離がある理由を現在考察している。以上のデータをまとめ、本年中に査読付き論文として投稿する予定である。また、本研究計画で使用した卵母細胞の成長促進因子探査スクリーニング法は極めて効率よく目的因子を見つけられる実験系であり、さらなる培養系の発展に向けて引き続き利用していく方針である。
|