研究課題/領域番号 |
21J15838
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡部 龍一 京都大学, 地球環境学舎, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | ソフトセンサー / 分散型排水処理 / メンテナンス / IoTセンサー / 時系列データ / データ前処理 / モデル / 2-Methylisoborneol |
研究実績の概要 |
今年度は,統計的モデリング技術の水処理分野における効果的な活用方法の検討をテーマに、下水用水質ソフトセンサー開発および水道原水中2-MIB濃度予測モデルに関する研究を行なった。下水中への長期浸漬による劣化影響を考慮した下水用pH・ORP・DOソフトセンサーの開発を目指し、 pH・ORP・DOセンサーのメンテナンス・非メンテナンス系の比較実験を開始した。実験では,製品差や設置箇所差によるセンサーシグナルのドリフトを検討するため,複数社製のpHセンサーおよび伝導度センサーの新規導入,固定カメラによるリアクター表層画像の定点撮影などの新しいデータの蓄積を開始し,実験を進めることができた。また分散型排水処理施設への水質ソフトセンサー設置を見据え,各種センサー,マイクロコンピュータおよび通信モジュールで構成されるIoTセンサーの開発を開始した。 水道原水中2-MIB濃度予測モデルに関する研究では,京都市の浄水場原水中の2-Methylisoborneol濃度をはじめ毎日モニタリングされる原水水質データ,および気象データの時系列データを入力とし将来の2-MIB濃度を出力(予測)する機械学習モデルを開発した。入力する時系列データの期間長(Lookback)や出力する2-MIB濃度の時点(Delay)などの設定や時系列データ前処理が,モデルの予測精度に及ぼす影響について解析した。また、機械学習による水道原水中2-MIB濃度予測モデルについて国際学会で,時系列データ前処理がモデルの予測精度に及ぼす影響について国内学会で研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下水中への長期浸漬による劣化影響を考慮した下水用pH・ORP・DOソフトセンサーの開発を目指し、 pH・ORP・DOセンサーのメンテナンス・非メンテナンス系の比較実験を開始した。実験では,製品差や設置箇所差によるセンサーシグナルのドリフトを検討するため,複数社製のpHセンサーおよび伝導度センサーの新規導入,固定カメラによるリアクター表層画像の定点撮影など,当初の計画より進展した変数についてもデータの蓄積を開始することができた。また分散型排水処理施設への水質ソフトセンサー設置を見据え,各種センサー,マイクロコンピュータおよび通信モジュールで構成されるIoTセンサーの開発を開始した。 排水用ソフトセンサーの開発では,時系列データへの統計学的モデリング手法によるアルゴリズム開発を行う。この際,時系列データへの前処理の有無や種別によって,モデルの精度の変化にどのような閉経を及ぼすかについての知見が必要となる。そこで,水道原水中2-Methylisoborneol濃度の予測をケーススタディーとして,京都市の浄水場原水中の2-Methylisoborneol濃度をはじめ毎日モニタリングされる原水水質データ,および気象データの時系列データを入力とし将来の2-MIB濃度を出力(予測)する機械学習モデルを開発した。さらに,入力する時系列データの期間長(Lookback)や出力する2-MIB濃度の時点(Delay)などの設定や時系列データ前処理が,モデルの予測精度に及ぼす影響について解析した。また、排水用ソフトセンサー研究を主導するスイス連邦工科大学の研究グループ出身の共同研究者と定期的に意見交換を行い、排水用ソフトセンサーの専門知識を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,pH・ORP・DOセンサーのメンテナンス・非メンテナンス系の比較実験の結果をもとにセンサー種ごとの経時的劣化度合いの定量的評価を行う。また,非メンテナンス系のセンサーシグナルへの時系列データ前処理の手法を検討し,前処理後の時系列データの微分値を指標とした対象リアクター内の水質異常を検出するアルゴリズム開発を行う。また分散型排水処理施設への水質ソフトセンサー設置を見据え,各種水質センサーの選定と施設槽内への設置のための改良,マイクロコンピュータおよび通信モジュールの選定,IoTモジュール類の防水加工を検討し,水質ソフトセンサーの完成を目指す。
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