研究課題/領域番号 |
21J15897
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角 俊輔 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 合成生物学 / RNA / リボザイム / 深層学習 / 生成モデル |
研究実績の概要 |
近年開発が進んでいるmRNA医薬は、標的組織に目的タンパク質を発現させ、予防あるいは治療効果を発揮することを目指す次世代医薬品である。しかし、標的組織においては意図した効果を示していたとしても、標的外組織においては有害性を示す場合があるため、副作用を低減したmRNA医薬が期待される。これを達成するために、本研究ではRNA結合タンパク質(RBP)を介した翻訳制御性mRNA(RNAスイッチ)に着目した。細胞種特異的なRBPに対するRNAスイッチが自在に設計できれば、標的組織のみでのタンパク質発現が可能となり、副作用の低減に繋がる。これまでの本研究では、RBPに結合する5’UTRの自動設計手法を開発し、概念実証としてRBPの1種であるU1Aタンパク質に対して結合する5’UTRを設計することに成功していた。 以上を踏まえて本年度では、まず設計した5’UTRの機能検証を行った。しかし、設計配列はU1Aの結合の有無に関わらず翻訳機能を発揮し、U1Aを介した翻訳制御は実現できなかった。そこでアプローチを変更し、自己切断型アプタザイムをmRNAに搭載することでRBPを介した細胞種特異的mRNA分解制御を達成することを目標と設定し直した。このために、早稲田大学の浜田道昭教授の研究指導のもと、深層学習を用いた配列生成モデルを新規に提案した。実験的検証として、提案モデルが設計した配列を実際に数本合成し、in vitroで切断活性を有することを個別に実証した。また、このin vitro実験を次世代シークエンサーを用いてハイスループット化するための条件検討も実施した。リボザイムのアプタザイム化とハイスループット実験による設計配列の実験的検証、さらなる応用研究は来年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、既存数理モデルと深層学習を組み合わせることにより、リボザイムの自動設計の新しい手法を提案した。研究当初、RBPを介して翻訳を制御する5’UTRの設計に取り組んだが、翻訳制御は関連する外因が多く成功しにくい対象であると考えられ、対象を自己完結し制御しやすい機構である自己切断型リボザイムに着目し直した。また、研究過程において、既存の深層学習モデルはリボザイム生成には不適であることを発見し、リボザイム生成のための新規枠組みを提案した。そして設計したリボザイムの切断活性をin vitro実験で確認し、提案したモデルの有効性を示した。in vitro実験の大規模化とさらなる応用研究は今度の課題として残されている。 今年度の研究内容は申請時の研究案とは異なるが、申請時の研究案に潜在していた問題点を推察し、新たな研究計画のもとで別の切り口から細胞種特異的な翻訳制御技術の実現に貢献したと考える。 以上のことから、「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、in vitro評価系の大規模化を推進し、提案したモデルから生成される配列のうちどのくらいが活性を有するのかを評価する。加えて、所望の活性強度を有する配列を生成することができるのかどうかを検証する。
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