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2021 年度 実績報告書

データ同化法の活用による計算組織学の再構築

研究課題

研究課題/領域番号 21J21292
研究機関名古屋大学

研究代表者

松浦 祐樹  名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワードPhase-field / 準安定相 / アモルファス相 / 分相ガラス / データ同化法 / アジョイント法 / 粒子フィルタ / KJMA式
研究実績の概要

データ同化法を活用した準安定相のギブスエネルギー推定に関しては,まず,HAADF-STEMや4DSTEM観察実験により得られる分相ガラスの濃度場は,実際には3次元の組織を電子線照射方向に次元圧縮した低次元(2次元)の濃度場情報として得られるが,このことを念頭に置いて,以下のような双子実験を実施した.簡単のため2次元のPFシミュレーションで生成したスピノーダル分解組織を,y軸方向に次元圧縮(平均化)することによって1次元の濃度場情報を作成し,その1次元の濃度場情報を観測データとして用いて熱力学パラメータを推定するアジョイントモデルを構築した.既知の初期濃度場(2次元)を使用した場合には,パラメータの推定に成功した.次に,BaO-SiO2ガラスにおいて近年見出された,組織ドメイン境界が平行移動することによって1つの相分離組織が異なる相分離組織に連続的に置き換わるような組織変化をモデル化したPhase-field(PF)モデルに対し,逐次データ同化法の一つである粒子フィルタを適用した.アモルファス相のギブスエネルギー関数を濃度の10次式にエントロピー項を加えた式にて定義したPFモデルに対し,粒子フィルタを用いて,PFモデル内の11個のギブスエネルギーパラメータを複数同時推定する手法を構築した.初期分布の設定や高次項がパラメータ推定値に及ぼす影響が特に大きいことを明確化した.
そして,アジョイント法のPF法への適用に関しては,一般化KJMA式のパラメータ推定を行った.加えて,KKT条件を考慮する手法を提案することにより,従来は困難であった,PFシミュレーションにおいて広く行われる秩序変数の不等式制約(例えば,凝固のPFモデルにおける固相の存在確率φに対する任意の位置xおよび時間tにおける不等式制約0≦φ(x,t)≦1)に対するアジョイントモデルの導出を可能とした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

準安定相のギブスエネルギー推定についての令和3年度の主要な目標は,以下の2点であった.
(1)分相ガラスの実験データの前処理に関連し,双子実験により試料厚さの影響調査を行う.
(2)アジョイント法以外のデータ同化法(粒子フィルタ等)を用いたパラメータ推定の確立を双子実験レベルで試みる.
(1)試料厚さの影響調査については,1次元の濃度場情報を観測データとしてパラメータを推定するアジョイントモデルを用いて,既知の初期濃度場(2次元)を使用した場合には,パラメータの推定が可能であることが示された.これは,理想的な場合には限られるものの,材料組織の情報量が削減された低次元の観測データからも,材料パラメータを推定しうることを示した重要な成果と考える.今後は,初期濃度場が得られないといった,より現実的な状況においても本手法が適用できるか否かを検証する必要がある.(2)のアジョイント法以外のデータ同化法に関しては,アモルファス相のギブスエネルギー関数を濃度の10次式にエントロピー項を加えた式にて定義したPFモデルに対し,粒子フィルタによって,PFモデル内の11個のギブスエネルギーパラメータを複数同時推定することが可能であることが示唆された.初期分布の設定や高次項がパラメータ推定値に及ぼす影響が特に大きいことを明確化した.今後は,粒子数を増やして準安定相のギブスエネルギーパラメータの推定精度向上を図るとともに,非逐次データ同化法であるアジョイント法を併用する予定である.以上より,本研究課題の進捗状況については,おおむね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

令和3年度終了現在,アジョイント法だけでなく粒子フィルタについての各種ノウハウも得られたと考える.次年度は,準安定相のギブスエネルギー推定に関しては,以下の3点について,検討を進める予定である.
(1)非逐次データ同化法のアジョイント法を用いて,初期濃度場を未知とし,パラメータとともに初期濃度場も推定した場合に,低次元の観測データを用いてパラメータが正しく推定できるか否かを検証する.
(2)逐次データ同化法の粒子フィルタにおいて,粒子数を増やし,パラメータ推定精度を向上させる.
(3)アジョイント法において,評価関数に背景誤差に起因する項を付け加えた弱拘束の場合について検討し,システムノイズを含むPFモデルにも対応可能なアジョイントモデルの構築を進める.
これら3課題の推進において,逐次型の粒子フィルタと非逐次型のアジョイント法を併用することにより,いずれかの手法のみでは得られないであろう相乗効果を図る.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Adjoint model for estimating material parameters based on microstructure evolution during spinodal decomposition2021

    • 著者名/発表者名
      Matsuura Yuki、Tsukada Yuhki、Koyama Toshiyuki
    • 雑誌名

      Physical Review Materials

      巻: 5 ページ: 1,13

    • DOI

      10.1103/PhysRevMaterials.5.113801

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] アジョイント法による一般化KJMA式のパラメータ推定2021

    • 著者名/発表者名
      松浦祐樹,小山敏幸,塚田祐貴
    • 学会等名
      日本金属学会2021年秋期(第169回)講演大会
  • [学会発表] アジョイント法によるスピノーダル分解のフェーズフィールドモデルパラメータの推定2021

    • 著者名/発表者名
      松浦祐樹,小山敏幸,塚田祐貴
    • 学会等名
      日本機械学会第34回計算力学講演会
  • [学会発表] KKT条件を考慮したアジョイント法によるフェーズフィールドモデルパラメータ推定2021

    • 著者名/発表者名
      松浦祐樹,小山敏幸,塚田祐貴
    • 学会等名
      日本金属学会2022年秋期(第170回)講演大会
  • [学会発表] Parameter Estimation of Phase-field Model Based on Microstructure Data and Its Uncertainty Quantification by the Adjoint Method2021

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsuura, Y. Tsukada, T. Koyama
    • 学会等名
      TMS2022 150th Annual Meeting & Exhibition
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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