研究実績の概要 |
特記事項なし. データ同化法を活用した準安定相のギブスエネルギー推定に関しては,まず,HAADF-STEMや4DSTEM観察実験により得られる分相ガラスの濃度場は,実際には3次元の組織を電子線照射方向に次元圧縮した低次元(2次元)の濃度場情報として得られるが,このことを念頭に置いて,以下のような双子実験を実施した.簡単のため2次元のPFシミュレーションで生成したスピノーダル分解組織を,y軸方向に次元圧縮(平均化)することによって1次元の濃度場情報を作成し,その1次元の濃度場情報を観測データとして用いて熱力学パラメータを推定するアジョイントモデルを構築した.既知の初期濃度場(2次元)を使用した場合には,パラメータの推定に成功した.次に,BaO-SiO2ガラスにおいて近年見出された,組織ドメイン境界が平行移動することによって1つの相分離組織が異なる相分離組織に連続的に置き換わるような組織変化をモデル化したPhase-field(PF)モデルに対し,逐次データ同化法の一つである粒子フィルタを適用した.アモルファス相のギブスエネルギー関数を濃度の10次式にエントロピー項を加えた式にて定義したPFモデルに対し,粒子フィルタを用いて,PFモデル内の11個のギブスエネルギーパラメータを複数同時推定する手法を構築した.初期分布の設定や高次項がパラメータ推定値に及ぼす影響が特に大きいことを明確化した. そして,アジョイント法のPF法への適用に関しては,一般化KJMA式のパラメータ推定を行った.加えて,KKT条件を考慮する手法を提案することにより,従来は困難であった,PFシミュレーションにおいて広く行われる秩序変数の不等式制約(例えば,凝固のPFモデルにおける固相の存在確率φに対する任意の位置xおよび時間tにおける不等式制約0≦φ(x,t)≦1)に対するアジョイントモデルの導出を可能とした.
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