本年度の研究活動では、金属ナノクラスター(NCs)の高機能化手段として広く用いられている配位子交換反応と合金化について、これらを組み合わせた際に両手段が双方にどのような影響を及ぼすかについて明らかにした。具体的には、金属原子25個からなる金25原子NCsおよび、金24パラジウム1原子NCs、金24白金1原子NCsに対して同一の配位子を加えることで配位子交換反応を進行させた。各金属NCsを用いた際に反応において得られる反応中間生成物や最終生成物の評価を行い、電子構造や化学組成情報を比較することで合金化の影響を明らかにした。評価方法には高速液体クロマトグラフィーを用い、反応系中に生成する複数の化学種を分離し、成分毎の吸収スペクトル変化から詳細な電子構造変化を観測した。また、これら反応系中の複数の化学種と最終生成物については、質量分析によって化学組成情報を得た。その結果、3種類の金属NCsをそれぞれ配位子交換反応させた場合には、得られる生成物NCsの金属数や配位子数、電子構造が大きく異なることが明らかとなった。これは、合金化のために導入する異種金属原子(パラジウム、白金)によって、反応開始時の金属NCsの骨格構造の柔軟性が影響していると考えられる。また本研究では、反応中間生成物もしくは最終生成物として、これまでに報告のない3つの金属NCsの合成に成功しており、配位子交換反応と合金化を組み合わせた従来よりも選択的な金属NCsの合成法を明らかにしたという点で意義がある。
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