研究課題/領域番号 |
21J40001
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 千晶 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(RPD) (80722058)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 東アフリカ沿岸部 / ザンジバル / 民衆のイスラーム / 伝統医療 / 精霊 |
研究実績の概要 |
1年目にあたる本年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により、ザンジバル(タンザニア連合共和国)での調査が実施できなかった。そのため、当初の研究計画を大幅に変更し、国内においてこれまでの内容を再度考察・分析することによって研究を行った。 まず、前年度までのイスラーム世界における共生の知恵に焦点を当てた共同研究の成果である。論文“The Thought of Coexistence on Tariqas on the East African Coast”では、主に19世紀後半以降、東アフリカ沿岸部においてタリーカ(スーフィー教団)が根付き、多様な人々の共生に貢献したことを明らかにした。その中で、女性たちも積極的にタリーカの活動に関与したことも示した。これまでの研究において、タリーカが伝統医療にも関わり、人々の癒しの側面も担っていることを明らかにしている。そのため、今後の研究としては、女性のタリーカの活動を切り口として、苦悩と病の癒しについて考察することも可能であると考える。タリーカを中心としたコミュニティ形成も、人間関係を明らかにする上で、重要な要素であると考える。 社会還元事業としては、オンライン講演会「今日のスーフィズム:神秘主義の諸相を知る」(Sophia Open Research Weeks 2021)において、「社会に息づくスーフィズム:東アフリカ沿岸部の事例から」というタイトルで発表した。本講演会では、スーフィー教団が東アフリカ沿岸部にもたらした共生の知恵について説明した。イスラームの共生の知恵が、日本国内においても多様なバックグラウンドを持つ人々と暮らすために、どのように活かすことができるか、という点についても今後考察していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、研究がやや遅れた理由は、新型コロナウィルス感染症の影響により、海外での調査が実施できなかったためである。海外調査の内容を元に論文を書く予定であったため、大きく研究計画を変更せざるを得なくなった。 さらに、国内においても新型コロナウィルス感染症の影響により、子どもの保育園登園自粛や小学校の休校、家族全員が新型コロナウィルスに感染したことによる自宅療養などで、研究を円滑に行う環境を十分に整えることができなかった。 以上のように、新型コロナウィルス感染症に関する対応によって、本年度は研究を当初の計画通りに進めることができず、進捗状況はやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、新型コロナウイルス感染症の心配がなくなれば、ザンジバルに渡航し、現地調査を実施する。 調査地選定や調査協力者とのコミュニケーションを円滑にするため、渡航前に調査コーディネーターと連絡を取り合い、調査計画について情報共有を行う。 また、調査日程もできるだけ長く設定し、なるべく多くの調査協力者に依頼して参与観察とインタビューを行う。調査で得られた内容は、国内において考察・分析し、論文や研究会において発表する。 新型コロナウイルス感染症の影響等によって海外渡航が難しい場合は、引き続き先行研究の精査やこれまでの調査の内容を再検討し、その内容を論文にまとめ、口頭発表を行う。
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