本研究課題の目的は、ラットを対象として個体間での動作同期が社会的絆の形成に及ぼす影響を明らかにすることであった。今年度は個体間同期、および共同行為課題の実験を実施し、学会発表を行った。さらに、動作同期の基本的な能力に関する論文を投稿し、学術誌に受理された。 個体間同期の実験では、まずラットに対して個別に一定の範囲のテンポでノーズポークを行う課題を訓練した。2個体がワイヤメッシュ越しに互いに視認し、隣り合って課題を行える装置を用いて、ノーズポーク動作獲得後に以下の課題を実施した。そのまま単独で課題を行う条件、2個体で隣り合って同時に課題を行う条件、および隣り合って交互に課題を行う条件を実施した。この課題中に、連続してノーズポークを行う際のテンポを記録した。収集したデータをもとに、相手と隣り合って課題を行う場合に、単独で課題を行う場合よりもノーズポークのテンポが2個体間で収束するのかを今後検討する。また、記録した映像と快情動に関する超音波発声から、動作同期が他個体との関係に及ぼす影響を検討する。 また、協力行動のような共通の目的のために相手と役割を分担する課題において、他個体との親近性が役割分担に及ぼす影響を検討した。その結果、同居個体間では非同居個体間よりも、相手の課題を共有することに由来する誤答が多いことが示された。同居個体間では課題共有時に相手に注目する度合いが高いことを示唆する。これらの成果に関して国内学会で発表を行った。
|