研究課題/領域番号 |
21J40162
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新津 藍 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員(RPD)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 膜タンパク質設計 / 分子動力学計算 / ペプチド化学 / 合成生物学 |
研究実績の概要 |
本研究は分子動力学計算を利用した膜貫通αヘリックスペプチド会合体の新しい設計法開発を通し、脂質二重膜内のαヘリックス会合メカニズムを解明することを目的とする。具体的には2つの研究プロジェクト(プロジェクト1:分子動力学計算による人工設計膜貫通ペプチドの自己会合過程の解析、2:計算を利用した膜貫通αヘリックスペプチド会合体のde novo設計)を通して、分子動力学計算による人工設計膜貫通ペプチドの自己会合過程の評価法の確立(プロジェクト1)およびαヘリックス相互作用を基礎とした人工膜タンパク質のde novo設計法の確立と新規膜貫通ペプチド会合体群の創製(プロジェクト2)を目指す。 2021年度は、事前検討で得られたコイルドコイルペプチド会合体について分子動力学計算と脂質二重膜中での構造分析を実施した。計算ではペプチド5-7量体モデル構造を脂質二重膜に配置し、種々の温度で全原子分子動力学計算を行いモデル構造の最適化を行った。また外部電場存在下で中心のチャネルをイオンが透過するかを確認した。また合成したペプチドとリポソームを混合して円偏光二色性スペクトルの温度変化を測定した結果、高温においてリポソーム存在下ではバッファーのみの時と比べてαヘリックスが大きく安定化されることが示唆された。上記の結果を含めた論文を次年度に国際誌へ投稿予定である。またコイルドコイル2~4量体のペプチド配列設計を実施し、配列候補の初期絞り込みを行った。今後、これらの配列の分子動力学計算による構造予測の検討を実施すると共に合成・構造解析を進めることで新規ペプチド会合体の創製へつながることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は設計ペプチドの分子動力学計算を中心に実施し、基礎的な計算を完了した。また新たなペプチド配列の絞り込みを実施し、次年度の計算・合成の準備を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
まずプロジェクト1について、コイルドコイル構造2~4量体の設計配列候補の分子動力学計算を実施する。各ペプチドのアミノ酸配列から、コイルドコイル構造を最適化した3次元構造モデルを計算機上で作成する。続いてそれらのペプチドの膜結合・膜挿入を分子動力学計算により予測し、脂質二重膜中で最も安定な会合体を形成できると考えられるペプチド配列を選択する。決定したペプチドを実際に化学合成し、円偏光二色性スペクトル、分析超遠心法等を用いてそれぞれαヘリックス2~4量体の形成を確認する為の構造解析を行う。また異なる構造モチーフを持つ会合体と計算結果を比較していくことを目指し、GxxxG構造を用いた2~7量体ペプチドの候補配列を設計する。
|