本研究は、文献調査により、存在論的な立場と、図書館情報学における「知識の組織化システム」(「領域分析(ドメイン分析)」と「統合的レベル分類」を想定)の関係を明らかにすることを目的としている。 2021年度は、ヨーランドの考える「領域分析(ドメイン分析)」と、彼がそれと親和性があると考えている存在論(物的一元論とプラグマティックな実在論(社会的・歴史的視点を認めたうえで相対主義や主観主義にならない))が、それぞれどのようなものかを明確にしたうえで、パトナムやガブリエルの存在論との比較から、「領域分析(ドメイン分析)」と親和性があり、社会的・歴史的視点を認めたうえで相対主義や主観主義にならないような、ヨーランドのものとは異なる存在論も考えられることを明らかにした。 2022年度は、ニョリの考える「統合的レベル分類」と、それと親和性があると考えられている存在論的複数主義が、それぞれどのようなものであるかを明確にしたうえで、「すべての研究対象を秩序づけること」という視点と「研究対象としての知識の地位」という視点から「統合的レベル分類」と複数主義的な存在論の肯定的な結びつきが確認されることを明らかにした。しかし、同じ視点から「統合的レベル分類」と肯定的な結びつきがありうるのは、ニョリの言う複数主義的な存在論だけではないということも明らかになった。 2023年度は、ヨーランドの存在論とニョリの存在論の決定的な違いである「抽象的存在者」を認めるということに焦点を当てて研究した。ハルトマンのレベル概念と、「統合的レベル理論」においてニョリが推奨する統合的レベルの考えを比較することによって、「抽象的存在者」を認めることが「知識の組織化システム」とどのように関係しうるか、「抽象的存在者」を認めることが認めないことより有益であると主張するためには何が示されなければならないかを明らかにした。
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