研究課題/領域番号 |
21K00003
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
朝倉 友海 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30572226)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 意味理論 / メタ意味論 / 東アジア哲学 / 西田幾多郎 / 牟宗三 |
研究実績の概要 |
本研究は、言語によって表現される意味の領域を、言語的思考の骨格をなす論理との関係に焦点をあてて、近現代東アジア哲学の観点から問いなおし、特に意味発生に着目しながら現代哲学の文脈において理論的な発展を試みるものである。当初の予定では、初年度および二年目を、西田をはじめとした日本哲学および牟宗三を中心に新儒家思想を対象に、そこでの意味理論の特徴を明らかにすることに充てるとしていた。初年度である2021年度は、長引く感染症の影響のもとで様々な制約があったものの、上記の目標に沿って研究を遂行し、次のような結果を得た。 まず、前年度の学会発表に基づいて論文「西田のいう「論理」を再考する」を公刊した。本論文では、西田哲学において包摂判断と内属判断とが相関的・双方向的に扱われていることに着目し、場所の理論における内属判断の従来考えられていたのと異なる役割を明らかにした。この点から場所の理論を見直すことで、言語的意味の重層的構造の解明に対する一定の見通しを得た。この論点はまた田辺による西田批判とも関係しており、引き続き論文を執筆中である。また、論文「意味の変化と観点の重層化」では、意味の変化という現象に着目することで、意味の発生・変化の条件の一つとなっている観点の重層化について論じるとともに、この観点の重層化そのものが仏教的な発想と一部重なっていることを日本の近古文学を参照にしつつ明らかにした。これらの論考執筆を通して、東アジア的な意味理論への手懸かりを得、少しずつ手繰り寄せている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、初年度および二年目を、西田をはじめとした日本哲学および牟宗三を中心に新儒家思想を対象に、そこでの意味理論の特徴を明らかにすることに充てる、としており、個人で進める範囲では初年度の進行具合にそれほど大きな遅れがあるわけではない。 ただし、この作業には当初計画したように国際的な研究交流が必要と考えられ、初年度である2021年度は引き続き感染症の影響のもとに国内外での研究交流に様々な制限が継続したため、とりわけ海外での研究会などの機会に対して参加を見送るという判断をいくつか行わねばならなかった。それによりやや進捗に遅れが生じていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度である2021年度は、引き続き感染症の影響がある程度は予想されていたが、学会参加等への様々な制限は緩むと思われていた。しかし実際には予想以上に制限が継続し、また様々な時間的・予算的な制限もあり、学会参加等を見送る場合が多く発生した。しかし、次の2022年度は海外での学会発表や研究交流も対面で行える可能性が出てきたため、いくつかの機会を得ると見込んで研究計画を進めている。対面での研究交流の機会を活かすことにより、研究計画の遅れも取り戻すことができると思われる。ただし、もし引き続き制限が継続された場合にも、積極的にオンラインでの研究交流の機会を得ることで、計画の遂行を推し進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に対して交付決定額が大幅に少なかったことと、感染症の影響による社会変化により移動に困難があったため、旅費・人件費・謝金としての使用を見合わせて、代わりに研究上必要となる物品費にその分を充てた結果、翌年度への繰越金が発生した。次年度は旅費・人件費・謝金の使用が見込まれるため繰り越し分はそれに充てることを想定しているものの、諸々の条件によりこれらの使途での不使用が再度生じるようであれば研究上必要な物品費に充てることによって有効に活用する計画である。
|