研究課題/領域番号 |
21K00008
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
香川 知晶 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (70224342)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | デカルト / デカルト派医学 / ガレノス / アクアペンデンテのファブリキウス / ボアン / ハーヴィ |
研究実績の概要 |
本研究課題ではデカルトの医学生理学思想の同時代への影響を中心に検討する予定であったが、当初予定していた十分な文献調査を行うことが困難となったため、研究の遂行方針を大きく変更することとし、本研究課題に関して助言を求めているデカルト研究センターのA. Bitbol-Hesperies博士の学位論文であるLe principe de vie chez Descartesの日本語訳を作成することを研究の中心とすることとした。この著作は、現在のデカルトおよびデカルト派医学生理学に関する研究を牽引しているD. Antoine-Maut教授(Ecole normale superieure de Lyon)がデカルト生理学に関する先駆的業績で今や古典となっていると評しているように、現代におけるデカルト医学思想研究の出発点に位置するものとして高く評価されてきた。そこではデカルト思想の独自性を解明するために、デカルトの医学生理学がヒポクラテス以来の医学思想史の流れの中に位置づけられ、ハーヴィなどの同時代の医学者たちとの関連が明らかにされている。そのため、本書を翻訳するためには、少なくとも17世紀に至るまでの長大な医学史の基本文献をチェックすることが不可欠となる。本年度はBitbol-Hesperies博士の著作を導きとして、特に古代ギリシア・ローマを代表するヒポクラテス、アリストテレス、ガレノスに関する邦語文献をはじめとする文献調査を行った。ただし、具体的な形になるまでにはまだしばらくの時間が必要であり、本研究の進行を背景とする現代医学の問題に関する著作を刊行するだけに留まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題で当初予定していた研究に関しては新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴って海外調査の実施が大幅にずれ込むことになったため、本2023年度からデカルト派医学の展開というよりもデカルト自身の医学哲学をヒポクラテス以来の医学史の進展のなかに置き戻すことによって解明することを研究の中心とする方針に切り替えることとした。こうした方針の大幅な変更を行ったため、研究の進捗状況としては遅れたものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はBitbol-Hesperies博士の著作Le principe de vie chez Descartesを導きとして、2023年度に特に古代のヒポクラテス、アリストテレス、ガレノスを対象として、邦語文献も含めた文献調査を行った。2024年度においては、そうした文献調査を継続するとともに、探索対象をルネサンス以降、17世紀に至るまでの時代に拡大し、フェルネル、ヴェサリウス、アクアペンデンテのファブリキウス、ボアン、ハーヴィ等、ルネサンス以降の医学思想とデカルトの生理学医学思想との関係を具体的に探る。さらに海外調査も実施し、医学史的な研究の裏付けを充実させることにしたい。なお、Bitbol-Hesperies博士の著作について、2024年度中には翻訳を終了し、刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外調査がコロナ禍のために実施できず、研究内容を大幅に修正せざるを得なかった。2024年度には実施できなかった海外調査を予定するとともに、国内外の文献調査等を踏まえ、A. Bitbou-Hesperies, Le principe de vie chez Descartesの翻訳を完成する予定である。次年度使用額については主として海外調査旅費にあてる予定である。
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