研究課題/領域番号 |
21K00009
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
三谷 尚澄 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60549377)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プラグマティズム / 価値の客観性 / コスモポリタニズム |
研究実績の概要 |
「表出主義的プラグマティズムの哲学的可能性を検討する」という研究目標を達成する一環として、交付申請書に記載された目的・計画に従いつつ、特に次の諸点について明らかにした。 「倫理言明の客観性や、合理的規範の成立構造をプラグマティズムの精神に則りつつ明らかにする」という研究計画について、大きな成果を得た。より具体的には、(本人がそう明言することはないものの)優れてプラグマティックな立場から現代政治哲学上の話題を積極的に論じているアンソニー・アッピアの業績に注目し、彼の著作である『コスモポリタニズム 見知らぬ他者たちと共に世界を生きるための倫理』(Kwame Anthony Appiah, "Cosmopolitanism / Ethics in a World of Strangers”, Norton, 2005)の翻訳を行なった。 アッピアのこの著作は、「実証主義の立場に基づく価値の相対主義」に対するプラグマティックな立場からの反論、「倫理的・政治的言説の解釈にあたって『実践に優位を認める」とはいかなる事態であるのか、「会話・共在・conversation」の概念を中心においた、斬新な観点からする政治哲学的なプログラムの提案(原理主義的な価値を奉じる人々との「共存」の可能性をどのように考えることができるのか」)等を含んでおり、「ポスト・ローティの段階におけるプラグマティズムの政治哲学的展開」を論じるにあたってはきわめて有益な参照点となる業績であるということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンソニー・アッピアは、我が国において、言及されることの多い割にその主張の詳細が知られることのすくない哲学者であるということができる。とりわけ、彼の展開するコスモポリタニズムの哲学が、(理論上の師であるヒュー・メラーの影響までを含めて)プラグマティズムの原則ときわめて親和性の高い仕方で展開されていることは、我が国ではほとんど知られていないと言っても過言ではない。 そのような状況のもと、「研究実績の概要」欄に記載した内容について、アンソニー・アッピアの著作の翻訳原稿を完成させると共に、「共にあること」の倫理学的意味を検討するシンポジウムにおいて口頭発表を行なうことができたことは、「表出主義的プラグマティズムの哲学的可能性」をテーマとする本研究の目的からして、堅実な成果であるということができる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、「表出主義的プラグマティズムの哲学的可能性」をめぐる検討を行う。とくに、「「事実」をめぐる記述言明のみに客観性を認め、(「価値」や「様相」等)それ以外の種類の言説を「二級の言説」として扱う経験論者の言い分に対して、どのような反論が可能であるか、という論点を掘り下げて検討していきたい。 とくに、今年度は、昨年度の実績に上積みする仕方で、「記述言明以外の言明に客観性(もしくは「一級の言説」としての資格)を認めることのできる言語哲学上の立場が、それを支える形而上学の理論を必要とするのか、という重要な論点についても、可能なかぎりの考察を積み重ねていく予定である。 より具体的には、デイヴィッドソンとローティによる「メタファー」をめぐる議論を取り上げ、「表出主義者の形態におけるプラグマティズム」の見地からするとき、「メタフォリカルな言明の合理的ステータス」をどのような仕方で解明することが可能なのか、という問題に関する検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で、予定していた海外渡航を延期せざるを得ず、その分の残額が生じている。ただし、次年度には、所属先からサバティカル研修を許可されており、本研究課題に詳しい研究者との共同研究/研究打ち合わせのための旅費として残額を使用する予定である。
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