研究課題/領域番号 |
21K00013
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
有馬 斉 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (50516888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 終末期医療 / 鎮静 / 安楽死 / 意図 / 二重結果原則 |
研究実績の概要 |
生命維持に有効な医療の利用の是非に関して、①文献レビューを推敲した。また、論文および、書評の執筆を行った。①文献レビューでは、緩和ケアの倫理に関する最近の文献も収集・精読し、論点を整理した。また、その内容に検討を加えて、②成果の一部を論文にまとめた。昨年度中に論文2本を出版し、来年度にも1本出版(書籍の分担執筆)が決定している。加えて、現在投稿論文を準備中である。 これらの論文では、主として、(A)いわゆる積極的安楽死などの積極的な行為による生命短縮(致死薬の投与)といわゆる間接的安楽死と呼ばれるタイプの行為(鎮痛剤や鎮静剤の多量投与)の間に倫理的な区別をつけることができるか、一方だけを許容して他方を許容しないという立場は正当化できるかの問題、または、(B)鎮静剤の投与が患者に及ぼす影響に関して、従来からよく倫理的問題が指摘されてきた生命短縮のリスクだけでなく、完全な意識喪失や、意識低下についても問題視されるようになってきたことを踏まえて、これらの影響をそれぞれどのように倫理的に評価するのがよいか、という問題のふたつを扱った。 この他に、薬学部の学生向けにかかれた教科書の分担執筆を行った。ここでは、とくに終末期医療の倫理に関して、基本的な倫理問題の整理と各国地域の政策の内容をまとめた。 また、依頼を受けて、3冊の書籍(主題はそれぞれナチスドイツの安楽死計画、京都ALS嘱託殺人事件、生体臓器移植)に関する書評を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、文献レビュー、論文執筆を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
鎮静の是非に関する研究を継続する。とくに、意識低下を鎮静剤の副作用にすぎないといえる場合があるか(薬に症状そのものを抑制する効果がある場合に意識低下が副作用にすぎないと指摘されることがあるが、なぜそのことが意識低下を副作用と見なせる理由になるのか)、副作用にすぎなければそれを医師が意図していないといえるか、医師がそれを意図していなければ結果的には意識低下や生命短縮が生じても正当化できるか、等の論点を詰めて検討する。成果は、英語で論文化して投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大により当初予定していた研究会や海外での発表等を来年度以降に延期したことが主な理由である。
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