研究課題/領域番号 |
21K00018
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
吉武 久美子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (90468215)
|
研究分担者 |
妹尾 弘子 (松本弘子) 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (90289968)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 医療の話し合い / ファシリテーション / 合意形成 / 時間・空間構造 |
研究実績の概要 |
本研究課題「医療の話し合いにおけるファシリテーションに関する倫理的価値構造の研究」では、令和3年度の目的は、「医療の話し合いとは何か」、「話し合いのファシリテーションとは何か」に含まれる概念について考察することであった。とくに、話し合いの参加者のもつ関心・懸念、話し合いのテーマ、話し合いの開催される場の特徴から考察を深めることとした。 令和3年度は、医療の話し合いのファシリテータに求められる特徴について現象学的視点をいれて整理した上で、患者・家族・医療者という関係者の関心・懸念を共有するために、ファシリテータの配慮すべき点として、時間・空間の構造について考察した。その結果、ファシリテータは、1)意思決定・合意形成の空間・時間構造では、話し合いが開催される特殊な環境とともに参加者の非日常的な状況で話し合いに臨むため、参加しやすさ、話しやすさ、理解しやすさの空間を設定することであった。2)参加者の経験に蓄積された空間・時間構造では、関係者の経験の蓄積が関心・懸念の形成される背景と根拠につながっている点に配慮することであった。3)検討課題が含む空間・時間構造では、検討課題に付随する限られた時間の把握とともに、参加者の関心・懸念の方向性を示す未来の空間的視点の具体化を図ることであった。空間・時間の構造把握は、合意形成における関係者間のステークホルダー分析の新たな指標にも寄与すると示唆された。 本研究成果は、第23回日本感性工学会にて、「ヘルスケアの合意形成とファシリテーション-現象学視点からの考察-」として9月に発表するとともに、2022年3月日本感性工学会春季大会にて「医療の話し合いにおけるファシリテーションと空間・時間の構造」として発表した。本内容は、「医療の話し合いにおけるファシリテータと空間・時間の構造」と題して、感性哲学12に論文として投稿し受理された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の令和3年度の目標は、医療の話し合いとファシリテ―ションの特徴について明らかにすることであった。目標に対して、医療の合意形成の概念の中で、「プロスペクテイブ合意形成」の概念を発展させて、ファシリテーションの時間・空間構造を明らかにすることができた。本内容は、国内での学会発表だけなく、投稿論文としてまとめることができた。現在、論文が受理されたところである。今年度の成果として学会発表と投稿論文にまとめられたことは、おおむね順調に計画が進んでいるためである。
|
今後の研究の推進方策 |
医療の話し合いのファシリテータの特徴として、空間・時間構造の視点をもつことを土台として、令和4年度は、次の2点について研究を推進する。第1は、医療の話し合いでのファシリテータがもつべき行為における倫理的視点についての考察である。ファシリテータのとるべき公平・公正な行為とは、どのようにすべきことかについて、配分の正義と手続き正義の両方の観点から考察する。くわえて、話し合いで参加者が納得するためのプロセスを踏むためのファシリテータのもつべき自己認識についても考察し、ファシリテータのもつべき倫理的価値構造の導出につなげる。 第2は、地域で活動する精神障害者関連職種が行う話し合いのファシリテータ的役割について考察することである。精神障害者は、自分の考えや関心・懸念を表現しづらい対象である。そのような対象者を含む医療福祉関係者との話し合いはいつ、どこで、どのように行われているのか、どのような課題を抱えているのかという現状を医療福祉関係者からのインタビューをとおして実践的に把握する。そのような対象理解の難しい場合の話し合いの現状を把握することは、医療の話し合いにおけるファシリテータ的役割の持つべき倫理的視点の把握につながる。 以上、今年度の研究計画は、医療の話し合いにおけるファシリテータのもつべき行為・役割についての考察を理論的と実践的の両方の方法から行うことである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品を購入したところ、5円の端数が残ってしまった。残った分は、翌年度請求した助成金とあわせて、図書などの物品購入の際に使用する予定である。
|