本研究課題「医療の話し合いにおけるファシリテーションに関する倫理的価値構造の研究」は、3か年で、医療の話合いにおけるファシリテータの行為・役割の特徴について考察した。 令和3年度は、ファシリテータに求められる特徴を、関係者の関心・懸念を共有するために必要な時間・空間の構造について考察した。本結果は、第23回日本感性工学会にて、「ヘルスケアの合意形成とファシリテーション-現象学視点からの考察-」として発表し、第17回日本感性工学会春季大会にて「医療の話し合いにおけるファシリテーションと空間・時間の構造」として発表した。本内容は、「医療の話し合いにおけるファシリテータと空間・時間の構造」として、感性哲学12に掲載された。 令和4年度は、精神障害者に焦点をあてて、話合いによる決定が困難である現状を合意形成の視点から整理し、看護師に求められる役割を考察した。その結果、精神科看護師の役割は、ファシリテーション、ナビゲーション、アレンジメントであることを明らかにした。本内容は、実践政策学にて論文「医療現場での精神障害者に対する意思決定支援の話合いと看護師の役割」として掲載された。 令和5年度は、ファシリテータの役割の特徴をさらに明確にするために、ファシリテータ役の看護職に求められる中立・公平についての考察を行った。その結果、看護での中立性・公平性には、衡平の概念をもあわせて、患者の個別性と提供者側の状況にあわせた方法の検討、患者間の不衡平を防ぐための感情コントロール、手続きとしての衡平による共有が必要であると示した。本内容は、第19回日本感性工学春季大会にて発表した。 以上、本研究にて、医療の話し合いのファシリテータについて、関係者の関心・懸念の共有、ナビゲーション的役割を含む3役、衡平も含めた中立・公平について考察できたことは医療職向けのファシリテータ教育の基礎資料として重要である。
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