本研究は、西洋中世のふたりの神学者・哲学者アウグスティヌスとトマス・アクィナスの、正義を中心とする哲学的・倫理学的学説と、その現代的可能性とを明らかにすることを目指して取り組まれた。特に重要なその成果は、第一に、人間が他の動物を支配することは正しいのか、という環境倫理学的な問いに対するトマスの答え――原則的には正しいとはいえ、無条件的にではない――を提示したことである。第二に、人間がものを食べたり飲んだりすることが正・不正を問われるのはなぜかという、食倫理学的な問いに対するトマスの答え――人間は飲食においても理性の秩序に従い、美徳を身につけなければならないから――を明確にしたことである。
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