研究課題/領域番号 |
21K00023
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
轟 孝夫 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 教授 (30545794)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイデガー / 存在への問い / フォルク / 新教育運動 / ヘルマン・ノール / ナチズム |
研究実績の概要 |
今年度はハイデガー哲学に関する概説書の執筆と連動する形で、ハイデガーの思想が20世紀初頭以降のドイツの学問論的議論のうちでどのように位置づけられるかについて、さらに立ち入った検討を行った。その結果、明らかとなったのは、ハイデガーは19世紀終わりに勃興したドイツ青年運動の強い影響のもとに思想形成を行い、彼の「存在への問い」がドイツ青年運動がその再生を求めていた「フォルク」共同体に哲学的基礎を与える試みとして捉えられるということである。 このような彼の哲学的志向は、同じくドイツ青年運動を基盤とする「新教育」運動にも共振するものであった。このことが1930年のハイデガーのベルリン大学への招聘に示されている。当時、プロイセン州では「新教育」運動に沿った教育改革が推進されていたが、ハイデガーはその精神的支柱として同州の最高学府に招聘されたと捉えられるのである。 こうした「新教育」運動を推進する教育学者やそれを支持する若き学生たちにとっては、ナチスの政権掌握は運動の断絶というよりは、むしろ自分たちの理念を実現する絶好の機会として受け止められた。まさにハイデガーのフライブルク大学の学長就任も、こうした「新教育」運動全般のナチス肯定と軌を一にしたものだと捉えることが可能である。 以上のように本研究では、ハイデガー哲学の学問論的、教育論的な背景をこれまでの研究にはない具体性をもって解明することができた。この研究成果は、『ハイデガーの哲学 『存在と時間』から後期の思索まで』(講談社現代新書、2023年6月刊行予定)として、幅広い読者に向けて発表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイデガー哲学の思想的背景について、当初予定していたように、当時の時代思潮、とりわけ青年運動との関係性を明確にすることができた。それとともに、青年運動とも密接に絡み合った同時代の教育改革運動とハイデガーの学問改革や大学改革をめぐる議論の関係にまで研究の視野を広げることができ、ハイデガーのナチス加担の背景をより具体的に明らかにすることができた。以上のように、本研究は当初見込んでいた以上の知見をもたらし、しかもその成果を一般向けの著書として社会に広く還元することができた。しかし他方でそうした同時代の教育改革運動におけるヴェーバーの位置づけについては手が回らなかったので、その点に鑑みて進捗状況の評価については、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ハイデガーと並んで研究のもうひとつの柱であるマックス・ヴェーバーについて、彼自身の青年運動との関係、ならびに青年運動や「新教育」運動の中でのヴェーバーの評価について検討し、同時代の学問論的議論を多角的に捉えることを目指していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、2022年度末まで海外出張を先延ばしせざるをえず、予定通りの予算消化ができなかった。
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