研究課題/領域番号 |
21K00030
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 真 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (30536488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 人口倫理 / 個人的価値・福利・厚生 / 価値論 / 規範倫理学と経験科学 / 直観 / 非同一性問題 / いとわしい結論 / 嗜虐的な結論 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍が続いていたことで人口倫理に関する研究発表を聞きに出たり自ら行いに出たりすることがしにくい状況だった。そこで、既刊の文献を読んで分析して各論点について自分の考えを進展させる、ということに時間と労力を費やした。 「名大発アカデミックフラッシュ 第8報」という研究交流会(名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 アカデミックフラッシュ実行委員会主催、2022年3月11日)において、「幸福、価値、倫理学:人口倫理の原則を求めて」という提題を行った。この提題は、人口倫理の問題とその価値論・規範倫理学・未来世代への責任との関連を本課題の問題意識の下で概説するものであった。人口倫理という領域の問題設定を哲学を専門としない主として理系の研究者に伝えるという試みとして有意義であったし、それがどういう受け止め方をされるかということを垣間見えたという点で学際的研究の可能性が見えて興味深かった。 また本研究は人口倫理の問題設定や解決策の根拠として持ち出される規範的直観の検討を経験科学の知見を通じて行うことを1つの目的としているが、「道徳に関する実証的研究と、その哲学的問題への関連性について」(『倫理学研究』第51号)という論稿において、倫理学研究に対する実証的研究の関連について一般的に論じた。 さらに、人口倫理で主流である理論的で公平主義的なアプローチに反対する、事例ごとの特殊性を強調し行為者の視点を重視する個別主義的な立場について、"Comments on Michael Campbell's "Reasons, Imagination and Points of View"(Asian Metaethics Workshop: Reason)においてコメントをした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍が続いており、国内や海外で発表することで自分の研究にフィードバックを受け、改善するという予定していたプロセスが後ろ倒しになってしまっている。また前年度に修了しているはずであった自分が代表者である研究課題「不幸の哲学的研究―経験的知見の分析に基づく、福利の否定的側面の理論的検討」(課題番号16K02148)が、これもコロナ禍の影響で修了が一年後ろ倒しになってしまい、その研究の完了のために時間をとられため、本研究課題の方に割ける研究時間が相対的に少なくなってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には対面で研究会を開催したり専門家を招聘したりできそうなので、積極的に人口倫理とその周辺課題に関わる人々と交流を持ち、自分の見解を形成する手助けとしたい。また、最新のアンソロジーであるThe Oxford Handbook of Population Ethicsが2022年3月に刊行されたので、それを研究することで自分の研究をさらに進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍が続いており、国内や海外で発表することで自分の研究にフィードバックを受け、改善するという予定していたプロセスが後ろ倒しになってしまった。
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