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2023 年度 実施状況報告書

「意識」概念の形成をめぐる系譜学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00034
研究機関九州大学

研究代表者

大西 克智  九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60733996)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードデカルト / モンテーニュ / ソクラテス / 経験 / 概念 / 自己
研究実績の概要

2023年度は、新たな論考や著作を執筆し公表するためにではなく、本計画の構想をさらに深化させつつ継続させるための方向性を模索することに研究の多くの時間を割いた。具体的には、「意識(あるいは良心)」と「自己」が本研究の二大テーマだが、とりわけ後者をめぐって、いわゆる「経験的自己(ないし自我)」と「超越論的自己(ないし自我)」というカント以来の基本的な二項対立を崩したところでこそ把握できるような「自己」のありようを探る作業である。言い換えれば、概念として(つまり普遍妥当的なものとして)語られる「自己」と個別の経験に裏打ちされた「自己」がいかに交錯し、前者が後者からいかに離脱するのか、あるいはしないのかに関する哲学史的かつ理論的考察である。
こうした作業の経過報告に相当するのが、「モンテーニュ・ソクラテス・哲学」という題目で行ったシンポジウム提題である(九州大学哲学会大会、2023年9月30日)。そこでは、ソクラテスに淵源する「汝みずからを知れ」という自己知の要請を、16世紀の思想家モンテーニュがどのように受け止めたのかを検証することを通して、「自己」の哲学的ステータスを再考した。
その後引き続き、フランスの哲学史家ジャン・リュック・マリオンによるモンテーニュとデカルトの比較論考の検討を開始て、再考作業を継続した。その結果は、2024年中に刊行される『哲学雑誌』(東京大学哲学会編、有斐閣)に寄稿する論文によって公にする予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画の当初の予定では、中世と近世のおおよそ端境期にあたる14世紀から15世紀のスコラ哲学(オッカム)を研究の主要な対象としていた。2023年度の研究内容は結果的にこの点から外れるかたちになっているが、本研究の柱の一本である「自己」をめぐる考察は着実に進行し、深化している。この点に基づき、自己点検の結果は「おおむね順調に進展している」に相当するももと判断する。

今後の研究の推進方策

2023年度に行った研究を通して、「意識(ないし良心)」と「自己」の問題を哲学史に即して着実に考えるためには、古代ないし中世よりも、近世および近代により多くの注意を払うほうが、より大きな成果を確実に得られるはずであるという認識に至った。もっとも、テーマ自体の抜本的な変更が必要になるということではなく、むしろ最も適切なアプローチないし観点を歴史的にスライドさせる必要性に気がついたということである。
残る二年間は、この観点に立ちつつ、上記の二項に「経験」と「概念」の関係(「概念」が「経験」から離脱するのはいつか、あるいは離脱ということはありえないのか)という問題を組み合わせるかたちで進めてゆくことにする。

次年度使用額が生じた理由

2023年度は幅広く多数の文献を渉猟することよりも、比較的少数の重要な文献(その一部はすでに所有していたもの)を徹底的に検討することに重きを置いたため、研究関連書籍購入のために計上していた研究費の使用額が下がることになった。
次年度は再び文献収集に努める必要が生じるので、次年度使用額はそのために当てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 再訪:ego sum, ego existo--経験と概念2024

    • 著者名/発表者名
      大西克智
    • 雑誌名

      哲学雑誌

      巻: 第138巻811号 ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] モンテーニュ・ソクラテス・哲学2023

    • 著者名/発表者名
      大西克智
    • 学会等名
      九州大学哲学会大会シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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