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2021 年度 実施状況報告書

ラッセル的一元論による現象的意識の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K00037
研究機関埼玉県立大学

研究代表者

高村 夏輝  埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (60759801)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードラッセル的一元論 / 現象的意識 / 結合問題 / 素朴実在論 / 論理的必然性 / 規則のパラドクス
研究実績の概要

前年度から執筆していた論文「ラッセル的一元論としての素朴実在論」が、2021年6月にNagoya Journal of Philosophy 15,pp1-13に掲載された。この論文では、現象的意識の説明としてのラッセル的一元論と、知覚の理論としての素朴実在論を組み合わせることが可能であると論じた。
その後、野矢茂樹の哲学を批判的に検討する論文集を編む仕事とのつながりで、ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』における論理観の説明と、『哲学探究』の規則のパラドクスの議論を検討した。この議論は、ラッセル的一元論が、客観的に描出可能な物理的性質が関係的・構造的なものであるとしていること、クオリアの存在をめぐる様相的議論や知識論証に依存していることから、賛否両方の立場からラッセル的一元論を検討することにつながる。現在、この研究成果は論文にまとめることができているが、発表は2024年になる予定である。
この研究内容と、ラッセル的一元論のとつながりをつけることは2022年度の課題としたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

野矢茂樹氏に対する献呈論文集作成の仕事が始まり、ウィトゲンシュタインの論理哲学についての研究をしなければならなくなった。この研究は、ラッセル的一元論をめぐる議論と無関係というわけではないが、ラッセル的一元論を定式化する際に前提される概念(たとえばクオリアや論理的必然性の概念)を掘り下げて検討する作業に相当するため、ラッセル的一元論そのものについての議論とは言い難いため、現状は「やや遅れている」と言うべきだと思われる。

今後の研究の推進方策

ウィトゲンシュタインの論理的必然性と私的体験をめぐる議論を手掛かりとして、ラッセル的一元論が定式される際に使用される「論理的付随性」関係や「クオリア」概念を批判的に検討する。
論理的付随性概念を支える概念間の必然的関係は、ウィトゲンシュタイン的観点からすれば、様々な概念(例えば色)の文法によるものであり、人間本性など世界の偶然的特徴に依存するものである。このような観点から、クオリアの実在性をめぐる様相的議論をウィトゲンシュタインの見解は掘り崩すことになる可能性がある。その可能性を検討する必要がある。
また、クオリア概念は「他者からはうかがい知れない内的空間」としての心のとらえ方を前提にしているが、これに対しても規則のパラドクスや私的言語論といった批判をウィトゲンシュタインは提出している。この批判を踏まえたうえで、ラッセル的一元論を維持することができるだろうか。
以上のように、ウィトゲンシュタイン的な批判からラッセル的一元論がどのように守られるか、そしてその結果ラッセル的一元論がどのような姿を採ることになるかを明らかにしたい。

次年度使用額が生じた理由

支出の大部分が物品費であり、研究用の図書の購入がその主な内容になる。書籍の購入は大学内のでしかアクセスできない会計システムへの入力が必要になるのだが、コロナの影響でほぼすべての講義が自宅での遠隔授業になり、大学に行く機会が大幅に少なくなり、書籍の注文機会も減少した。そのため、次年度に繰り越す金額が少し多くなってしまった。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] ラッセル的一元論としての素朴実在論2021

    • 著者名/発表者名
      髙村夏輝
    • 雑誌名

      nagoya Journal of Philosophy

      巻: 15 ページ: 1-13

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2022-12-28  

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