研究実績の概要 |
本研究の目的は、現代ドイツにおける社会哲学の動向、特に21世紀以降のいわゆるフランクフルト学派(=批判理論)の活動を追跡調査することを通して、社会実践としての「批判」が現在直面している状況を明らかにすること、そして特に、J.ハーバーマスやA.ホネット以降の批判理論の新たな世代の取り組みをマッピングし、批判のもつべき規範性を改めて、具体的な形で析出することである。そのための下準備として、一年目は批判理論にまつわる主要なテクスト分析を行うことを主眼としていた。その成果としては、まず第一に世界文学会関西支部の第六回研究会(Zoom会議、2021年7月3日開催)にて「笑うアドルノ――或るカバと猟犬の物語」と題して口頭発表を行ったことが挙げられる。また「笑うアドルノ――〈真剣なからかい〉の両義性を巡って」と題した論文が、社会思想史学会の公募論文として正式に受理され、2022年秋に出版予定の『社会思想史研究』第46号に掲載される予定であることも併せて記しておく。この他1年目の予定としては、カントやフーコーの古典的な著作のほか、批判理論の第三世代の代表者ホネットの最近の著作(Honneth, Die Armut unserer Freiheit, 2020)や、英米圏の批判理論に関するテクスト(E. Allen, The End of Progress, 2016; M. Jay, Reason after Its Eclipse, 2017, etc.)も分析対象にしていたが、これは2022年に出版予定の申請者の単著(タイトル「感動を、演技するーフランクフルト学派の性愛論」、晃洋書房)に組み込む予定である。
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