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2021 年度 実施状況報告書

ヴェーダ祭式の祭官選任儀礼に見る古代インド階層社会の形成

研究課題

研究課題/領域番号 21K00046
研究機関東北大学

研究代表者

西村 直子  東北大学, 文学研究科, 准教授 (90372284)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードヴェーダ / ヴェーダ祭式 / 祭官選任儀礼 / pravara / 社会階層
研究実績の概要

ヴェーダ祭式は,家長が祭主として祭官に執行を依頼するという形で行われる。式次第の途中には,執行者となる祭官を選任する儀礼(プラヴァラ,原義は「選びとること」)が挿入され,祭主の家系図が読み上げられる。本研究は,ヴェーダ祭式における祭官選任儀礼の包括的精査により,祭式の整備過程と社会の変化の解明に資する資料を提示することを目的とする。祭官選任は最古の『リグヴェーダ』(紀元前1200年頃)に既に言及されているが,儀礼の詳細は紀元前8世紀の文献において初めて議論され,祭式整備の過程で家系を論ずる必要が新たに生じたことを推測させる。なぜ祭官選任の際に祭主の家系が問題になるのか。また,なぜ既に進行している式次第の途中で祭官を選任するのか。当該儀礼の整備の背景には,移住から定住へという生活形態の変化と,著しい王権の伸長があったと考えられる。
インドの社会階層を構成する四ヴァルナ(婆羅門,クシャトリヤまたはラージャニヤ,ヴァイシュヤ,シュードラ)とこれらの序列は,最古の『リグヴェーダ』まで遡る。四ヴァルナの階層性は後代に成立した『マヌ法典』などのヒンドゥー法典類によって更に強化され,現代に至るまでインドの社会に影響を与えている。儀礼名である「プラヴァラ」の語は,後には「家系図」を謂うものとして用いられるようになる。四ヴァルナが世襲制である点を考慮すると,家系を巡る議論の進展がインド社会における階層性の強化に果たした役割は小さからぬものと言える。本研究ではヴェーダ文献の関連箇所を精査し,古代インドにおける階層社会形成過程の解明にも寄与しうる成果を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではヴェーダ諸学派が伝える祭官選任儀礼に関する議論を取り上げ,批判的ローマ字テキストの作成,翻訳並びに注解を行う(2021-2022年度を予定)。中心となるのはヤジュルヴェーダ学派のサンヒター(マイトラーヤニー,カタ,タイッティリーヤ,ヴァージャサネーイ),ブラーフマナ(タイッティリーヤ,シャタパタ),祭式綱要書(主としてバウダーヤナ,ヴァードゥーラ,アーパスタンバ,マーナヴァ,カーティヤーヤナ)である。
Vedic Word Concordance(Vishvabandhu)に基づき,Samhita, Brahmana文献,及び主要祭式綱要書における動詞vari+pra並びにその名詞派生形pravara-の全用例を整理し,ローマ字テキスト作成と翻訳作業を進めている。この過程で,前綴りpraを伴わない動詞語根のみの用例にも「(祭官を)選任する」意を持つものがあることが明らかとなり,検討すべき文献の範囲が拡大したため,当初の見込みに比して進捗が変化する可能性が生じた。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き,動詞vari+pra並びにその名詞派生形pravara-の全用例を整理し,批判的ローマ字テキスト作成と翻訳作業を進める。各用例の分布を学派,文献ジャンル,祭式分類,使用するmantraの学派横断的対応関係等の各視点から分析し,祭官選任儀礼に関する伝承の全容解明に努める。作業の過程で,前綴りpraを伴わない動詞語根のみの用例にも「(祭官を)選任する」意を持つものがあることが明らかとなり,検討すべき文献の範囲が拡大したため,当初の見込みに比して進捗が遅延する可能性が生じた。研究計画全体の遂行を見直し,祭官選任儀礼の内容を明らかにするとともにその展開を跡づけられるよう,精査の範囲を適宜勘案する。

次年度使用額が生じた理由

海外に発注した書籍の入荷が遅れたため。次年度に繰り越し,書籍等の購入に充てるべく計画している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Parajika(波羅夷)第3条,殺戒について2021

    • 著者名/発表者名
      西村直子
    • 学会等名
      第62回印度学宗教学会学術大会(課題研究)
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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