研究課題/領域番号 |
21K00052
|
研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
志賀 市子 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (20295629)
|
研究分担者 |
シッケタンツ エリック 國學院大學, 神道文化学部, 准教授 (10593204)
森 由利亜 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247259)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 扶鸞 / 内丹 / 救世新教 / 経堂 / spirit writing / 閔一得 / 江宗朝 / 扶鸞結社 |
研究実績の概要 |
今年度はもともと中国や台湾での現地調査や資料調査を行うことを予定していた。だがコロナ禍が収束しないため、年度中の海外渡航はむずかしいと判断し、文献研究に重点を置くことにした。ちょうど2021年7月に台湾の博陽文化出版から、清代から民国期にかけての扶鸞文献を収録した叢書『中国民間信仰、民間文化資料彙編』第四輯が出版されたので、科研メンバーの同意を得てこの叢書を購入し、今後の研究に活用することにした。 科研全体の研究成果としては、今年度は2回の研究会をオンラインで実施した。1回めは2021年4月に行い、メンバーの顔合わせと科研の目的と今後進めていく事業についての打ち合わせを行った。2022年3月に行った2回目のオンライン研究会では、科研メンバー以外のゲストスピーカー(小武海櫻子)にも参加してもらい、志賀、森、小武海がそれぞれ「今年度の研究成果及び今後の研究計画」に関する報告を行った。 個々の研究成果は少しずつ上がってきている。志賀は游子安との共著で、一般読者向けの扶鸞をテーマとした書籍(中文)を七月に香港で出版した。またこれまで行った中国粤西地域の「経堂」と呼ばれる扶鸞結社に関し、扶鸞と地方社会というテーマで論文(日文)を発表した。森は本科研では主に「扶鸞文献における内丹法の検討」というテーマで研究を進めているが、すでに関連する研究として、閔一得の『金蓋心灯』における扶鸞と内丹に関する論文(日文)を発表している。シッケタンツは今後調査の対象となる悟善社と救世新教の関連資料を集中して集めるとともに両教団の中心メンバーであった江宗朝の扶鸞活動の分析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では海外で行う現地調査(文献調査)と国内で科研メンバーが各自進めていく文献研究の二つを柱として進めていく予定であったが、コロナ禍のため海外渡航ができず、現地での調査はいまだ実施できていない。一方、文献研究はこの1年間に各自進めており、それに基づいた論文を発表するなど、成果は上がっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、海外渡航が可能になれば、台湾または香港で現地調査または資料調査を行いたいと考えている。もしコロナ禍が長引いて渡航が不可能になっても、引き続き現在持っている資料を使って研究を進めていく予定である。またオンラインミーティングを2,3回開催し、研究成果を共有するとともに、最終年度に国内外の研究者を招いて開催する国際学会(対面、またはオンラインやハイブリッド形式)に向けて、準備(テーマの絞り込みや参加者の選定、有意義な討論に向けての情報共有など)を進めていくつもりである。 今年度の個人的な研究計画では、志賀は粤西地域の経堂における信仰と儀礼についてさらに研究を進め、台湾の雑誌や英文の論文集に発表する予定である。森は本研究計画において、清代の扶鸞文献における内丹法の検討を主なテーマとしており、伝統的な文献の注釈に見える内丹法と扶鸞における内丹との比較を行いたいと考えている。今年度以降は、鸞書において表現された内丹思想について具体的に検討したいと考えており、清朝の著名な内丹家であり扶鸞の信奉者でもあった閔一得の内丹思想をとりあげるつもりである。シッケタンツは、引き続き民国期の政治と扶鸞をテーマし、とくに政治家が数多く入団していた悟善社と救世新教が出版していた扶鸞雑誌『霊学要誌』の内容と彼らの政治活動・政治思想との関係を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は分担者の希望に基づき、叢書『中国民間信仰民間文化資料彙編・第4輯』博陽出版(全36冊)を代表者のところで一括購入した。分担者に配分した分担金ではそれ以上のまとまった叢書を購入するには足りなかったため、次年度に回すことにした。次年度は王見川、柯若樸(Philip Clart)、 侯沖、范純武 主編『明清以来善書叢編・初輯』新文豊出版公司(全18冊)とその続集の購入にあてる予定である。
|