研究課題/領域番号 |
21K00055
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
白井 順 東洋大学, 文学部, 准教授 (20534689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 秋山罷斎 / 崎門学派 / 明治の知識人 / 朱子学 / 舞田敦 |
研究実績の概要 |
明治の山崎闇斎派(朱子学者)である秋山罷斎がどのような交友関係を持ち、どのような講学活動をしていたのか、具体的な交流であったのかを書簡などの調査を行いながら進めている。 事前調査で入手した資料をもとに、2021年3月20日の白山中国学会にて【基調講演】「秋山罷斎―生田正庵との交流について」を発表し、その一部を【論文】「秋山罷斎―近代崎門学者の肖像」(『東洋思想文化』第8号、2021年3月刊行)として掲載した。更に2021年8月5日~7日に桑名市立図書館にて実地調査を行い、目下、書簡集である『東西雁魚』目録の作成作業を進めているが、不鮮明で解読不能な箇所も多く、難航している。秋山文庫に関する過去の目録を入手した。現在、そのデータに基づき調査を進めているが、新型コロナ感染防止による図書館訪問の制限などの影響もあり、大きな進展はない。書簡集『東西雁魚』は明治31年~大正9年に秋山罷斎に宛てたもので、書簡に登場する書名や事実の裏付けを入手したデータによって行っている。調査の途中ではあるが、『東西雁魚』は全冊完全に残っているわけではないことが分かったので、現存する部分の目録作成を優先した。書簡の一部は国士舘大学附属図書館所蔵の秋山罷斎書簡と対応すること、また長崎ミライON図書館所蔵の楠本海山資料と対応すること、この二点に関して確認が取れたことは大きな進展だと言える。またさらに、秋山罷斎に関する新資料も発見し、現在それらと『東西雁魚』・秋山文庫との関係を調査しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在本課題の主たる研究目的は、秋山文庫所蔵の『東西雁魚』の基礎的調査である。秋山罷斎の弟子・吉田英厚が作成した『秋山文庫目録』を入手し、本来は四十三冊あったはずであるが、現在残っているのは二十五冊のみであることが分かった。また実見調査により、『東西雁魚』に収録されている書簡は、舞田敦・吉田英厚・中山正心(仲誠、聞斎)・中山正明(伯公、持斎)・楠本正翼をはじめ、江間政発・春名斯文・生田格・田原鋼三郎たちが罷斎に宛てたものであることも分かった。さらに、文面から秋山罷斎の高弟たちは勤め先の都合で遠方にあり、普段は書簡によって交流するほかなかったこと、秋山罷斎に学問的な質問をするだけでなく書籍を献呈したり、金銭を贈与したりしてことも分かった。しかしながら、『東西雁魚』の解読の難しさと資料の問題によって、当初の計画よりも遅れていることを自覚している。差出人不明の書簡類も多く、現存する二十五冊の目録作成をしているが、進展は好ましくない。2021年度は、特に新型コロナの影響で大学が出張を禁止していたため、実地調査に行くことができなかった。また所蔵先の担当者が変わり、コミュニケーションが円滑とは言えないこともあり、2021年度は実地調査も1度しかできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
秋山罷斎の基礎的文献研究を進めるためには、協力者や支援者が必要だと考えている。所蔵先の更なる理解と協力を得て、調査を進めていくとともに、書簡解読の手助けをする人材が必要である。また山崎闇斎派特有の筆写本が多いので、その方面に関する比較調査・分析は欠かせないと思われる。三浦國雄・清水則夫両氏が秋山罷斎の弟子・舞田敦が編集した『浅見絅斎集』を刊行した(2022年3月)。『東西雁魚』にはその編纂に関わる書簡があり、その専門家でもある三浦・清水両氏に助言や支援をお願いすることを計画している。更なる推進方策として、研究の範囲を少し簡略化して進める方法を検討中である。解読不明な書簡・差出人不明の書簡など、すぐには解決し難い資料に関してはそのまま置いておき、例えば一番弟子である舞田敦・吉田英厚などの重要な人物に絞って、書簡の解読をするという形を考えている。いずれにせよ、2021年度の実地調査で解読不可能な書簡・資料類がかなりあることが分かったので、当初の計画から変更をせざるを得ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力者を得るため、山崎闇斎派研究で知られる三浦國雄先生に分析や研究に関して意見を頂くことにした。また三浦先生に協力者もしくは支援者を紹介して頂き、謝金を払うための予算を計上することにした。なお三浦國雄先生は、秋山罷斎の弟子である舞田敦が編纂した『浅見絅斎集』(ぺりかん社、2022年)をしたばかりである。
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