研究課題/領域番号 |
21K00059
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研究機関 | 身延山大学 |
研究代表者 |
池上 要靖 身延山大学, 仏教学部, 教授 (60193182)
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研究分担者 |
高田 知仁 身延山大学, その他部局等, 研究員 (70866756)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ルアンパバン仏像 / ラオス仏教 / クメール仏像 / ランナー仏像 / ルアンパバン仏像分類 / 仏暦2500年 / ファーグム王 |
研究実績の概要 |
代表者は第34回パーリ学仏教文化学会学術大会にて口頭発表を行い、その内容を「パーリ学仏教文化学」第35号に「ルアンパバンの仏像台座銘文からみる仏像分類に関する試論」と題して公表して。ルアンパバン世界遺産区域内の1174体の仏像のうちから、台座銘文がはっきりと判読できる5体の仏像の造像の形態や作像の推定年、それぞれの仏像の共通項と作風から読み取れる著名な元型仏像の推定について論じた。銘文が示している年代は仏暦2500年(西暦1958年)ごろであり、それらの作風からはクメール系とタイ北部ランナー系とに分かれると判断した。現代仏像といってよい年代ではあるが、王国を維持していた年代でもある。その点では、西のランナー、南のカンボジア双方からの文化的影響を物語る仏像であると言える。 分担者はタイの年代記を中心に史料に見られる仏教の交流に言及し、さらにラオス国内に現存するクメール系仏像を、ヴィエンチャンとルアンパバンを中心に調査した結果を「ラオスに現存するクメール様式の仏像と関連資料」と題して『身延山大学ラオス世界遺産仏像修復プロジェクト20周年記念誌』に発表した。結論として、ヴィエンチャンやルアンパバンのクメール系仏像の特徴は、パバン仏像よりも古い形式のナーガを背にした仏像(ナーガ仏)がほとんどであり、この事実はファーグム王よりも古い時代の特徴であることと指摘できた。したがって、ファーグム王よりも新しい作例は、逆にクメール系の影響が薄れ、スコータイ系の影響による造像が増していく。ファーグムを境として、ランサーン朝の仏教交流の変遷による外交関係を見ることができる。 現地に赴き、データの確認と調査活動がコロナ禍によって全くかなわなかったが、2019年度までに採取したデータを用いることで、上記の研究成果を得ることができた。、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ラオスのルアンパバンに赴き、現地の仏教寺院において2019年度までに行った調査データに欠けているデータを採録する予定であったが、コロナ禍により渡航が許されなかったので、この点が全くかなわなかった。そのため、代表者と分担者の持っているデータを共有して、計画に沿って進めている段階である。 ラオスに限らず、文化交流の観点から、タイ北部・カンボジアなどへの渡航もできなかったため、対照データの採集が進んでいない。 よって、現段階では過去データに頼っているのみで、仏像の各部分の詳録データの採取がないため、対象とする仏像の比較が間に合っていないので、「遅れている」の判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
代表者と分担者は、ラオス・タイ北部・カンボジアへの渡航がかなうかどうかであるが、本年度には是非ともこれらの国に赴き、不足している仏像データを採録して比較検討を行い、仏像の詳細な分類と、時代ごとの基準仏像の選定、そして造像年代の推定を行なえるようしっかりとデータの蒐集をする。 特に代表者はラオスのルアンパバン仏像に傾注して基礎的な分類を本年度の夏までに終える。分担者は夏に、タイ北部・カンボジアでの類似の仏像データを採録して、代表者の作成した基礎分類と照会して、その類似点・共通項を探る。 また、両者ともに台座碑文や仏像制作上の逸話など、オーラルヒストリーの採取も行い、仏像の伝播に関する文化史的仮説を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度である2021年度は、コロナ禍により調査委対象国(ラオス・カンボジア・タイ北部)への入国が許されていなかったため、旅費及び現地協力者などへの謝金の項目が0円となった。次年度は、2021年度に実施できなかったプログラムを実施予定であるので、その分の経費をスライドする。
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