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2022 年度 実施状況報告書

初期仏典における禅定思想の研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00061
研究機関佛教大学

研究代表者

細田 典明  佛教大学, 仏教学部, 教授 (00181503)

研究分担者 松田 和信  佛教大学, 仏教学部, 教授 (90268128)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード初期仏教 / ウパニシャッド / 禅定思想 / サンスクリット阿含 / 禅観経典 / sattva / 降魔 / アシュヴァゴーシャ
研究実績の概要

説一切有部の伝承するサンスクリット文『雑阿含』を禅観経典との関連性の上で検討するうえで、sattvaが重要な意義を有しており、相互間の関係を解明する大きな手掛かりとなっている。これは従来の研究には知られない新知見であり、阿含の修行論を内容とする『雑阿含』「道品」各支の意議内容が、古層経典である『スッタニパータ』に見られる禅定の系譜を体系的にまとめていく過程を示すものである。
この点について、降魔・成道・梵天勧請等の仏伝記事にみられる、精勤・信・智慧等の語は古層経典以来知られるが、これらは禅定に関わる要語であり、『スッタニパータ』の内容が『マハーヴァスツ』や『ラリタヴィスタラ』に改変・増広を伴い収録されている。この伝承の変遷を、阿含・ニカーヤはもとより、大乗経典や仏教文学作品にいたる展開を「sattvaについて」(『日本仏教学会年報』第86号,2022,pp.1-22(横組))に公表した。
さらに、アシュヴァゴーシャの作品について、研究分担者は、「出曜経と大智度論共通の馬鳴偈について」(『印度学仏教学研究』71巻1号, 2022, pp.45-53(横組))、「ブッダチャリタ・アンソロジ―失われた詩を梵文三啓集写本に求めて―」『佛教大学仏教学部論集』107号(2023, pp.65-84)、「灰河経(雑阿含1177経)の梵文原典と和訳―〔附〕原型カンギュルのチベット語訳テキスト―」(共著『仏教学セミナー』115号, 2023, pp.1-30(横組))、「ごみの山に終わる華鬘の喩え―第5三啓経の梵文テキストと和訳―」(共著『佛教大学仏教学会紀要』28号, 2023, pp.55-80)に発表し、禅観経典類との関連も明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

禅観経典から唯識文献に至る念想・瞑想についての思想は、修習の具体的な内容を解明をする根拠と成りうるものである。すなわち、サンスクリット文『雑阿含』の復元作業において、『修習次第』・『中辺分別論』・『声聞地』・『大乗阿毘達磨雑集論』・『大乗荘厳経論』等における阿含の引用を精査中であり、その中には『雑阿含』「道品」散佚部分に属するものが散見し、従来の研究での未比定・誤解を是正を行なう。
修道を説く阿含の様々な比喩に関して、仏伝から仏教説話にいたる題材を有部律の中に精査し、その中からサンスクリット文の現存する仏伝資料を取り上げ、『根本説一切有部毘奈耶』を中心に、サンスクリット文のあるものは、阿含との平行句を回収し、二次資料としてチベット訳は当該箇所を明示する。さらに、説一切有部の律蔵についてさらに調査を行う。
また、他分野の学問領域に対しても、インド思想を踏まえた近現代文学をはじめとする大きな影響力を持った作品について内容を分析し、本課題の重要性を明らかにする。さらに、インドにおける映画から教育用教材等の資料を蒐集し、それの内容が本課題の現代的意議に深く関わるものとして認知されるための調査を行ない、考察を進める。

今後の研究の推進方策

【2024年度】説一切有部の論蔵について、さらにアビダルマから唯識に至る論書から、特に、説一切有部の阿含を直接引用・解釈する『瑜伽師地論』「摂事分」については『雑阿含』「道品」の部分のチベット語訳を玄奘訳と照合させ、声聞地」について、サンスクリット阿含の部分を明示する。また、研究課題に関係する研究者を招聘し、禅定思想についてのシンポジウムを行う。
【2025年度】サンスクリットの語彙について古ウパニシャッドから初期仏教に至る瞑想・禅定の問題を進展させ、仏教以前に成立した古ウパニシャッドにおける内観によるアートマンの認識を瞑想の問題として捉え、様々な修行法の体系化以前の実際を初期仏教における禅定の問題として考察を進める基礎を確立する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 5件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] ウパニシャッドと仏教2023

    • 著者名/発表者名
      細田典明
    • 雑誌名

      京都・宗教論叢

      巻: 16 ページ: 16-19

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ブッダチャリタ・アンソロジー―失われた詩を梵文三啓集写本に求めて―2023

    • 著者名/発表者名
      松田和信
    • 雑誌名

      佛教大学仏教学部論集

      巻: 107 ページ: 65-84

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 灰河経(雑阿含1177経)の梵文原典と和訳―〔附〕原型カンギュルのチベット語訳テキスト―2023

    • 著者名/発表者名
      松田和信・イェンス・ウヴェ=ハルトマン(Jens-Uwe Hartmann)
    • 雑誌名

      仏教学セミナー

      巻: 115 ページ: 1-30

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] sattvaについて2022

    • 著者名/発表者名
      細田典明
    • 雑誌名

      日本佛教学会年報

      巻: 86 ページ: 1-22

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 出曜経と大智度論共通の馬鳴偈について2022

    • 著者名/発表者名
      松田和信
    • 雑誌名

      印度学仏教学研究

      巻: 71-1 ページ: 45-53

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 『大乗荘厳経論』第18章第17偈について2022

    • 著者名/発表者名
      細田典明
    • 学会等名
      佛教大学仏教学会
  • [学会発表] 『荒地』「雷のことば」と『ブリハッド・アーラニカ・ウパニシャッド』5.22022

    • 著者名/発表者名
      細田典明
    • 学会等名
      日本T.S.エリオット協会第34回大会

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公開日: 2023-12-25  

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